第16話
「アメリア様。もう立派な悪役令嬢の顔ができるようになられましたね。メアリは嬉しいです」
「メアリ。それどういう意味?」
悪役令嬢って何?
どんな令嬢?
悪いことするの?
「メアリ。悪役令嬢って何をするの?」
「使用人を虐げたり自分の思い通りにならないと怒ったり人の物を欲しがったり。男を買い漁ったりとかですかねぇ」
「私のどこが悪役令嬢なの?」
「顔だけです。中身はとても優しい令嬢、のはずです」
もう、ひっかかることばかり言うのやめてよね!
いつもそうなんだから。
まぁ、メアリはとても楽しそうに話すからいいか。
早くお茶会にならないかな。
***
違う意味でお茶会の日を待つこと5日後。
「ついに来た」
「はい。先に挨拶だけ済ませて下さいね。そして消えましょう」
「当たり前!ンフフ、待っててね。私の愛しい本よ」
テンション上げ上げだ。
全然楽しくないお茶会だが本のためならしょうがない。
「本来はここで殿下が迎えにくるはずですが」
メアリの言うとおりだ。
でも、殿下は来ないだろう。
あの伯爵令嬢も来てるはず。
そっちを優先するはずだ。
だから勝手にサロンに行く。
令嬢らしかぬ歩き方で急いでサロンに向かう。
何人か騎士やら貴族からと出会ったが一々挨拶などしていられない。
すぐに挨拶を済ませて急いで書庫に向かわねば。
時間はないのだ。
本を読むためにはたくさんの時間がいる。
「アメリア様。表情が最低です。ここでは仮面を忘れずに。心の中身が丸見えです」
「あっ、ごめん。嬉しくて」
メアリに注意されながらサロン着く。
「メアリは待ってて」
「はい。いってらっしゃいませ」
普通は侍女や護衛騎士などがドアを開くものだ。
だが、そんなことはさせない。
普通にドアを自分で開いて中に入った。
中に入るとお茶会を楽しんでいた令嬢が一斉に振り向いた。
普通は凄く怖いことだ。
だが、私にはどうでもいいこと。
王妃がどこにいるのか周りを見ると中央の席で上品に紅茶を飲んでいた。
その周りには美しい愛玩奴隷たち。
今日は3人か。
少ないかも。
死んだか?
数人、死にそうだったもんなぁ。
ゆったりと歩くこともなくスタスタと歩き王妃の目の前に出る。
「エヴァンズ公爵の長女アメリア、只今到着しました。お招き感謝いたします」
「久しぶりですね。元気そうで………………そのクマなんとかなりません?あなた、また徹夜しましたね?何度言えばよろしいのかしら」
「私の楽しみですので」
「………………」
「でも、あまり体調がよろしくありません」
「そうでしょうね!そんなに酷い顔していれば分かるわよ!」
「王妃様のお顔を見るだけでもと思いまして」
「………………」
凄く怪しんでる。
それはそうだ。
そんなこと全然思ってないもの。
いつものことだから王妃も分かっているだろう。
「アメリア嬢。ルーカスに挨拶しなさい。婚約者でしょう」
「はい?」
王妃はゆっくり目線を自分の正面に移す。
そこにはキラキラと輝く美しい金色の髪と透き通るような綺麗な肌と冷たい瞳をした正装姿の殿下がいた。
王妃に似てとても美しい容姿をしている殿下はこの国一番の美男子とも言われている。
陛下は凄く身体が大きくて熊のような男なのに、全く陛下の遺伝子を受け継いでいない容姿だ。
だが、容姿は似てなくても剣の扱いはしっかり受け継いでいるようだ。
幼少の頃から剣の扱いは素晴らしく天才とも言われたほどだ。
2年前の山賊討伐では前線で活躍し見事首領を始末した、とか。
………………。
全く分からなかった。
気配が感じなかった。
もう王妃のことで頭がいっぱいだった。
これはやってしまったか?
無表情だが目は怒りでいっぱいのようだ。
殿下の横には令嬢が殿下に寄り添うように座っていた。
「ご機嫌麗しゅうございます。殿下」
このくらいでいいだろう。
殿下に声を掛けただけで隣の令嬢が睨んでくるし。
「んグッ!」
「アメリア嬢?どうかしたの?まさか、気持ち悪いの?だから徹夜はやめなさいと言っているのです!」
突然口を塞いだ私に王妃は心配そうに言った。
「し、しシズレイジマス………………」
「早く下がりなさい。気分が悪いです」
ヨロヨロと歩きながらサロンから出た。
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