第15話
あれから2日後。
団長が屋敷へ訪れた。
何かあったのだろうか。
「メアリの紅茶はとても美味しいの。どうぞ」
「あぁ、ありがとう」
応接室のソファーに座っている団長はとても絵になる。
綺麗な男性が座るとみんな絵になるのかね。
「何かあったの?」
「あぁ、まぁ、うん。王宮の日程が決まったから知らせて来たんだけどさ」
「うん」
「王宮の地図って持ってるか?」
王宮の地図?
まぁ、持ってはいるけれど。
「持ってる」
「やっぱり持ってた」
「内緒だからね。間取り図なんて本当は持っていては駄目なんだから」
「どうやって手に入れた?」
「内緒」
「………………」
「何に使うの?」
「アメリアの計画が確実に成功するように、ね。お膳立て用だよ。団員達が本気で考え始めちゃって。アメリアの存在の大きさが分かるよ。やる気に溢れてるって感じ。ショーのときよりも」
「それは、なんというか。嬉しいような複雑のような」
「王族も貴族も嫌ってる奴らだけどアメリアのことになると別のものになるみたいで。早く解放させたいって思うらしい」
「解放?」
「うん。まぁ、早く外に連れ出したいって。アメリアは純粋な貴族と言えないから平民として暮らしていけるよ。地図の他に隠し通路とか知ってるか?」
「ある」
「………………いや、だからなんで持ってる?」
「内緒でーす」
唖然な表情をされたけど気にしない。
知りたいことは何がなんでも知りたいのだ。
隠し通路なんて面白すぎる。
「それを使って夜会から抜け出してた?」
「………………」
「当たりだな」
便利だった。
とても重宝した。
こんな便利なものがあるのかと思うほどに。
「王宮の地下に流れている水路の地図もあるけど」
「それ、かなりヤバイものだぞ。本当にどうやって手に入れたんだか」
「内緒」
「アメリアならこの国なんて簡単に侵略できそうだ。一夜でアメリアが女王になれる」
「やろうと思えばできるかも」
「………………否定しないのか。こんなヤバイ令嬢を逃すなんて。この国は終わったな」
「私は危険人物じゃない!」
「いや危険人物だよ。十分」
もう、犯罪者扱いみたいで嫌だ。
「今、持ってくるから待ってて」
「悪いね」
応接室から出て自分の部屋に戻る。
王宮の間取り図は全て頭の中にあるから渡してもいいけど。
これを王宮に持っていかれるのはマズイ。
覚えてもらうしかない。
1冊の本になっている地図を持って応接室に戻る。
「これだけど」
「分厚いな」
「これを王宮に持っていかないでね。見つかったら大変だから」
「これを暗記するのか………………」
「元闇市の団長なら簡単でしょ」
「いや、俺はそうだけど。団員は大変だ」
「大丈夫。みなさん優秀だよ。分かるもん」
「否定はしない。開催日は7日後。時刻は昼過ぎ。午前中は準備時間だから。アメリアは来るのか?」
「別のことをする予定だから」
「そっか。ハルは来た?」
「全く。こんなに期間を空けるのは初めてなの」
「………………準備でもしてるのか?」
「準備?」
「あぁ、いや、気にするな。ハルも忙しいから」
団長は地図を貰うと屋敷から出て行った。
ゆっくりもできない状況にしてしまった。
「アメリア様。お手紙が届いております」
「手紙?」
「はい」
メアリから渡されたのは殿下の印鑑が押されている手紙だった。
不吉な手紙ね。
すぐにでも燃やしてやりたい。
「アメリア様。お読みになりますか?」
「読む。読むしかないじゃない。前に無視したら酷いことになったもの」
「そうでしたね」
手紙を受け取りその場で読む。
読み終えると暖炉に投げ捨てた。
「どのような内容でしたか?」
「お茶会。王妃様主催のお茶会に参加すること。殿下の婚約者として。なぜ殿下から招待状がくるの?普通は王妃様からじゃないの?」
「いつものことです。しかしこの時期にですか?」
「税金泥棒め。誕生会だってあるのにお茶会ですって?王妃様主催のお茶会がどのようなものなのか知らないの?あれをお茶会とは言わない」
「参加なさいますか?」
「………………王宮に行けるチャンスは逃さない」
「かしこまりました。では、手配いたします。ドレスの準備もございますし」
「お願いね。目立たないドレスでお願いね。王宮の中を動き回っても大丈夫なドレスで」
これで書庫に行ける。
第三書庫の隠し棚を調べるのにちょうどいい。
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