第14話
「すっごい量の本!本当にどっから仕入れてくんの?」
「わぁ!これ、読みたかった本だ!買わずに読めるじゃん!」
あれ?
子供たちに交じって双子のヨキとルリが本を漁っている。
ヨキは金髪でルリは緑色の髪だから見分けるのは簡単だ。
時々、髪色を交換していることがある。
意地悪な双子だ。
まぁ、楽しそうだからいいけど。
「ヨキ。ルリ。順番が違う。最初は子供たち!双子はもう大人でしょう!」
「「こんな難しい本読めるわけないよ」」
「学びながら読むものなの」
「「あとで読ませるから」」
「決まりは守るもの。団長に言われてるはずよね」
「「………………」」
私に怒られたからなのか不貞腐れてしまった。
この双子は本当に同じ行動をする。
こんなにぴったりにならなくてもいいのに。
「さぁ、みんな自分が読みたいと思う本を選んで。たくさんあるから焦らないでね」
こんなことを言ってもじっくり選ぶ様子はないけど。
みんな勉強したくてしょうがないのだ。
「アメリア様。いつもありがとうございます。こんなにたくさんの本」
「ユエさん。屋敷にあった本を寄付するみたいなものだから。それより!凄かった!お絵かきするなんて。もう興奮しちゃった!本以外でこんなに楽しんだの久しぶりだった」
「たくさん練習しましたから。成功して良かった」
「たくさん話を聞きたいな」
「はい!私もです!」
「「僕たちも!!ユエばかりズルいぞ!」」
「もちろんみんなでね。時間はまだあるもの」
たくさんの国を回るサーカス団から聞ける話はとても貴重なものだ。
これから国を出る私にとっていい情報になる。
国々の争い事や内乱なども聞けてどこか治安が悪いのか分かるもの。
ユエさんのテントの中でたくさんの話を聞けた。
隣の国の王太子問題で内乱が起こったとか。
民族が独立宣言をして新しい国を作ったとか。
どれも新鮮な情報ばかり。
この国ではなかなか聞けない内容だ。
どこの国も何かしらの問題はあるががこの国ほど酷くはない。
内乱もすぐに終わるってことは国の組織がしっかりしている証拠ね。
深夜になる頃にはユエさんも双子も深い眠りの中。
私はテントから出て外の椅子に座り星空を見上げた。
「アメリア様。風邪をひいてしまいますよ」
「大丈夫。少しだから。ねぇ?メアリ」
「はい」
「ユエさんから聞いた話はどれも素晴らしい情報だったわ」
「はい」
「………………この国の間違いがもっと世間に広がる。そのうち、隣の国から攻められるんじゃないの?」
「この国の地形は複雑ですからね。簡単に侵略はされません。それに、無駄に強い騎士団もおりますし」
「闇市と騎士団、どっちが強いかな」
「………………それはどのような意味でしょうか?」
「あれは抜きにして」
「では、一部は互角でしょう。ダン様や団長クラスは勝てるかもしれません」
「少ない戦力ね」
「闇市も全てが手慣れとは限りませんよ」
「そうね」
「さぁ、テントの中にお入り下さい。明日から忙しいのですから」
「ふーぅ。本当に忙しい。予定が狂ってしまった」
「上手くいけばいいのですが」
「凄く惚れ込んでいるようだから大丈夫。陛下も許すでしょ。息子のことを凄く可愛がっているじゃない」
「親バカですからね。さぁ、お休みください」
「はいはい」
メアリに即されテントの中に戻る。
床の上で寝てしまっている3人に毛布を掛けて端っこに寝っ転がる。
明日は屋敷の整理をしなければならない。
お父様や他の侍女や執事にばれないようにしないといけない。
時間を決めて行動したほうがいいかな?
あまり残されてはいないもの。
山賊は待ってくれないし。
馬の準備もしておかないと。
お父様の再婚も早めておいて。
あの二人の仲も動きやすいように固めれば………………
頭の中はグルグルと今後のことでいっぱいだ。
こんな状況で寝なさいと言われても寝られない。
朝方になるとユエさんも双子も起きた。
双子は朝食の担当だからと急いでテントから出た。
「アメリア様。朝ご飯食べていきます?」
「ごめんなさい。ちょっと急ぐから。昨日はとても楽しかった」
「私もです。またお話しましょうね」
「そうだね。じゃぁ、頑張ってね」
「はい!」
挨拶もそこそこにしてテントから出た。
テントの外にはメアリが待機していた。
「では、帰りましょう」
「えぇ、断捨離の準備と恋のキューピットになりますか」
「アメリア様がキューピットですか?違和感ありますね」
「しょうがないじゃない。待ってること出来ないもの」
みんな忙しそうに準備しているからまた今度にしましょう。
打ち上げのときでもいいし。
ちょっと寂しさもあるけどこれからの準備のためフードを深く被り屋敷へと急いで帰った。
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