第13話

「話?」


「そう。まぁ、椅子に座って」


私とメアリは傍にあった椅子に座った。


「国境付近に山賊が出始めた。知ってるか?」


「………………知ってる」


「その山賊が元闇市の者ってことも?」


「知ってる」


「そっか。なら、話が早い。そいつらが派手に動きだした。今以上に大きな騒ぎになったらかなり高位の騎士団が動くと思う。団長クラスの騎士なんて動いたら面倒だし、検問所なんて作られたらもっと面倒だし。早く出たほうがいい。山賊はハルがいるから問題ないと思うが、階級にもよるけど騎士団は難しいところがあるから」


「貴族に被害が出始めたの?」


「貴族も大商人も。バラバラにした死体を道に捨てたり木に括り付けたり。体の一部を切り取って送りつけたり。あとは鬼ごっこしながら殺したり。いろいろだ」


「別荘地にも被害が?」


「貴族の娘や息子が攫われた。腕や足を切り取られ胴体と頭だけの状態で敷地に捨てられていたらしい。奴隷市場に売られたり、性奴隷にされて殺されたり」


「………………前より酷い状況かも」


「首領が戻って来た」


「首領?」


「あれ?知らなかった?ずっと首領が不在だった。どっかで遊んでいたらしい」


買い物から帰ってきたみたいな言い方ね。

士気を高める首領が帰ってきたから動きだした。

………………。

いいえ、そういう理由ではないか。

彼らは士気とかどうでもいいでしょうね。


「自分抜きで楽しいことをするな、とか?」


「分かってるな。俺もそう思う」


「予定より急ぐしかないか。ハルにも伝えないと」


「いいや、ハルもそのつもりで動いていると思う。アメリアは早く婚約破棄できるようにすること。それがなんとかなればすぐにでも屋敷から出られる」


少々強引な方法で進める必要があるかな。

陛下の印鑑を貰えれば………………

殿下とあの令嬢の仲をもっと深めなくてはならない。

すぐ破棄したいと思うように。

もう時間を掛けて選ぶこともできない。


「団長………………お願い事があるんだけど。団員の方々には申し訳ないけど」


「何?」


「王宮で行われるサーカスに一工夫をお願いしたいの。あの二人が急接近できるような一工夫をお願い。大事になるような。招待の中には高位な貴族もいると思うから。きっと神官も。みんながいる場は使える」


「………………難しいことをお願いするな。殺したいほど憎んでいる団員もいるのに」


「………………」


「そうだなぁ。久しぶりにロニお兄ちゃんって呼んで欲しいな。呼んでくれたら引き受けるよ。ほらほら。子供の時は呼んでくれてたでしょ?お兄ちゃんは悲しいなぁ」


「もうっ!!ロニお兄ちゃん!お願いします!」


「うん!お兄ちゃん頑張るよ。可愛いアメリアのためだ。さて!あいつ等も待っているからそろそろ行きますか!」


団長は嬉しそうに言った。

全く、子供はどっちだ。

だけど、確かに団長は私にとって兄のような存在だ。

小さい頃からとても可愛がられていたし。

それにしても早まったな。

誕生会までにある程度整えておかないと。

本当はもう少し先だったけど。

お母様にも手紙を出さないといけない。

メアリにも手配を速めてもらって。

読書をする時間がないじゃない。

山賊も時期が悪い。

もっと考えて行動してほしいものだ。

闇に紛れて行動するのが闇市でしょう?

全然紛れてないから。

あっ、元闇市だったか。


「アメリア様!!来てくれてありがとうございます!」


「どうでしたか!?今回はほとんどが新技です!」


みんなが集まる広場に行くと知っている団員がたくさんいた。

みんなが私に話しかけてくるからもうてんてこ舞い。

でも、とても楽しい。

子供たちも2年前と違って元気に成長していた。

栄養失調で倒れそうな子供などどこにもいない。

それぞれ、自分の仕事を与えられ3食しっかり食べられる環境だ。

当たり前のことがこんなに嬉しいなんて。

メアリに頼んでいた本を子供たちに渡すととても嬉しそうにもらうのだ。

文字を読めない子も多いけど、年上の子がしっかり教えるから本を渡しても問題はない。

文字の読み書きや数学の本に歴史の本など様々だ。

たくさんの本を読んでほしい。

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