第11話
周りはたくさんのお客さんでいっぱい。
家族や恋人など様々だ。
屋台なども並びお祭り騒ぎ。
いつもの酷い光景が嘘のようだ。
奴隷の死体が転がっていた空き地は今はサーカス会場。
「凄い人気ね」
「それはそうですよ。ユエ様が所属しているサーカス団は有名ですからね。団長様はまだ若く女性の方々にも人気ですし」
「まだ38歳だった?」
「はい。10年でここまで成長させるとか流石ですね」
「さて、終わってから挨拶しましょう」
「そうですね。集中しているところをお邪魔するわけにはいかないので」
今日の最終公演に並び指示された席に座る。
中は満員で熱気で暑い。
「空中ブランコ!前と違って確かに技が上がっているかも!」
「ネタバレは駄目ですよ。ここでは秘密にして下さいね」
「はーい」
前回よりテントも大きい。
凄くお金が掛かったでしょうに。
それだけ成功しているってことか。
嬉しいことだ。
「どうやら始まるようですよ」
ラッパの音が響き渡る。
幕の奥から登場したのは仮面を被った男性だ。
『ご来場の皆様!これよりご覧になるのはどれも超人的な者たちばかり!猛獣使いやゾウ使い!綱渡りに火渡り!そしてそして!大技の空中ブランコ!!まずは可愛いワンちゃんの大縄跳びをご覧下さい!それそれ!ワンちゃんたち!出番だよ!』
あれ?
この声って団長?
幕の奥からは大型犬や小型犬がたくさん出てきた。
20匹はいるだろうか。
「可愛い」
人が縄を回してワンちゃんたちが飛ぶ。
見事なジャンプで何回も飛ぶ姿はとても可愛い。
「ユエさんの出番はいつ頃?」
「そうですねぇ。ゾウ使いですからね。ライオンの出番が終わってからでしょう。今度はどんなことをするのでしょう」
ショーは次々と進みユエさんの出番がやってきた。
大きなゾウの背中に乗って登場したユエさんはとても逞しく見えた。
簡単にゾウから降りたユエさんはお客さんに一礼した。
するとゾウもお客さんに向かって一礼したのだ。
なんて賢いのか。
「見てみて!お絵かきしている!お花ね!ひまわり?」
「信頼関係が出来ている証拠ですね」
ゾウとゾウ同士のボールの蹴り合いや大きなボールをお客さん参加型で蹴り合うなど前回より確実に腕を上げている。
「本当に凄い!」
本以外でこんなに楽しめたのはいつぶりかな?
「なんだか幸せな気分。こんな気持ちになるのは久しぶり。何回でも見たいもの」
「子供のように楽しみますね」
「楽しいもの」
ユエさんの出番が終わると今度は双子の出番。
すっかり青年になってしまった双子はナイフのジャグリングを披露する。
どんどんナイフの数を増やしてもう何本あるのかも分からない。
これは彼らしか出来ない技だ。
「ヒヤヒヤしちゃう」
「すっかり美男子になられて。2年でここまで成長しますか?」
「ふふっ、ファンがたくさんできそうね。団長を超えてしまうかも」
新しく入った子も何人かいた。
各国を回っていながら新人も見つけているようだ。
どんどん大きくなるわ。
この大陸一のサーカス団って言われてもおかしくない。
最後は空中ブランコ。
6人が挑戦。
その中には団長の姿も。
仮面を外している団長の姿を見た女性たちからはため息が漏れた。
双子とは違った綺麗さで周りを虜にするのだ。
その中には男性も含む。
まさに魔性。
「メアリ!凄い!人が飛んでる!」
「見ていられませんよ。落ちたら即死です」
「ネットがあるから大丈夫よ。ほら、見てみて!」
「うーっ」
もう、メアリったら。
変なところで臆病だ。
こんな素晴らしいのを見逃すなんて。
私は手が痛くなるまで拍手をした。
最後はショーに参加した団員が全員ステージに集まりお客さんに向かって手を振ってお別れだ。
「では行きましょうか。差し入れも届いていると思います」
「えぇ、住居はテントの裏だっけ?」
「はい。前と変わりません。ただ、人数が増えただけです」
「良かった。差し入れ多めにしておいて。子供たちもいるみたいだから」
「食べ盛りですからね」
一度テントから出て裏に回る。
立ち入り禁止の看板があるが近くにいた団員に手を振ってアピールをした。
すると私に気づいたのか小走りで近寄ってくれた。
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