第8話
機密書が紛失したという話を聞いた次の日のこと。
何やら眉間に皺を寄せている強面な司書が公爵邸に来た。
王宮の書庫で働いているらしい。
この司書は私のことが信じられないのか機密書がどこにあるのかと何度も言うのだ。
その答えは決まっている。
知らない。
「ですから何度も申しましたよね?私は何も知りません。この公爵邸を探してはいかが?お父様から許可を頂かなくても大丈夫です。私が許可しましょう」
探してもいいと言っているのにこの司書は探さないのだ。
私ではないからいくら探したところで本は出てこない。
司書はなかった場合のことを考えて探さないのかもしれない。
「どこに隠しましたか?」
「………………」
いい加減にしてほしい。
本当にどうしたらいいのだろうか。
しつこい司書だ。
「では、こうしましょう。その本を見つければよろしいのかしら?何か現場の写真などは?犯人探しなんて楽しいですね。推理小説みたいですね。こういうワクワク感は好きですわ」
嘘ではない。
推理小説は好き。
犯人が最後まで分からないなんて最高に面白い。
最後のどんでん返しも堪らない。
「遊びじゃない!!これは、とても重大なことですぞ!あの機密書は………………大切なものです」
あら、怒ったと思ったら最後は静かになった。
「遊びのつもりではないです。だって、疑いがかけられてますのよ?司書様は私が怪しいと思っておられるご様子。何度も言いましょう。私は何も知りません。騎士の構成もいまいち分かっていないのに」
「………………」
もう4時間は経っているかな?
お昼の時間も終わってしまった。
すごーく迷惑な司書だと思う。
「困った方だ。調べなくともあなたが犯人だと分かってます。早く隠した場所を教えていただけませんか?これ以上嘘を付くというのなら王宮に連れていきます。尋問で吐いてもらいましょう」
だから分かってないから。
そろそろ我慢の限界だ。
ゆっくり立ち上がり司書の目の前に立つ。
「困った方なのはあなたですよ。脳無し野郎」
「グフッ」
司書の顔を鷲掴みにして冷たい言葉を吐き捨てる。
拷問?
自分が何を言っているのか分かってる?
「管理が甘いのが悪い。もっと強化するべきでは?だから盗まれるの。証拠もないのに犯人扱いですって?ふざけないで。調べなくてもいい?適当に犯人見つけて終わりにしたいのでは?機密書を探すつもりもないのでは?あなたが犯人だったり。あなたを尋問しましょうか?4時間もずっといるなんて。本当に迷惑な司書ね。この私が盗む?それも興味がない本を?そんなもの読んだところでどのような得が?私には必要ないわ!!」
ギリギリと締め付けると痛いのか司書が手を剥がそうとする。
女性の力もなかなかでしょう?
力の入れ方を習ったもの。
ハルって教えるのも上手だ。
性格に難ありだけど。
「そこまでにしていただきたい。アメリア嬢。とても痛そうですから」
急におじさんの声ではない若い声が聞こえて振り返る。
そこには騎士服を着た青年が立っていた。
胸元にはたくさんのバッジ。
「まぁ、ダン様ではありませんか。どうかされたのですか?私、凄く機嫌が悪いのですけど。犯人扱いされてしまって」
「アメリア嬢。お久しぶりです」
「用件は手短に」
相変わらず綺麗な容姿ですこと。
ブルーの髪を立たせたスタイルは綺麗な顔がよく見える。
だが、悪魔のような真っ赤な瞳もよく見える。
「では、彼を離してあげて下さい。そして、アメリア嬢の疑いは晴れましたよ。4時間も粘りましたからね」
「この脳無し野郎は私が始末しますわ」
「………………」
私の怒りを感じ取ったのかダン様は深ーいお辞儀をした。
「大変申し訳ございませんでした」
………………。
グルというわけ?
とんでもない人達。
誰の指示?
ダンがここにいるということは殿下?
ダンは殿下付きだし。
投げ捨てるように司書の顔から手を離した。
まだ苛立ちは消えないが一先ずソファーに座る。
「司書様。消えなさい。二度と私の前に現れないで」
司書は深々と頭を下げて部屋から出て行った。
「メアリ。ダン様にお茶をお願い」
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