第7話
お母様からプレゼントを頂いた日から2日後のこと。
お父様が凄い形相で私の部屋に乗り込んできた。
相当急いで来たのか呼吸が凄く乱れている。
久しぶりにお父様の顔を見た気がする。
ほとんどあちらの屋敷にいるから。
あと少しで公爵夫人となる女性と子供に夢中だから。
跡取りとなる息子だ。
しかも優秀。
可愛がるのも分かる。
「お父様。お久しぶりです。どうかなさいましたか?そんなに汗だくになって。日頃、運動をしていないからそんなに呼吸が乱れるのです」
一人用のソファーに座り本を読んでいたのに邪魔をされてしまって機嫌が悪い。
本より重要なことなの?
そうじゃなかった許さない。
「ア、アメリア!」
「まずは呼吸を整えてからにして下さい。見苦しい」
「み、みぐるしい!?なっ………………」
あっ、ショックな顔してる。
本当に分かりやすい。
話せるような状態でないことが分かっているのか深呼吸をして呼吸を整えると、お父様は私の肩を掴み鼻息を荒くして口を開いた。
「お前はいったい何をしたっ!?」
「はい?」
何を言っているのか分からないけど。
何をしたのか聞かれたけど何もしてない。
「はい?じゃない!王宮の書庫から本を盗んだのか!?そうなのか!?嘘だろ!?」
「盗んでおりませんよ。なぜ、そのようなことをしなければなりませんの?」
「いいや、嘘をついてもダメだ。今すぐ返しなさい!」
「何を言っているのか分かりません!」
「いいや分かるはずだ!この国の重大な機密書だぞ!」
「機密書?」
「この国の軍事力だ」
あぁ、あの本か。
あれは借りてはいないけど。
あれは5年前ほど王宮で読んだから。
「自分の娘を犯人扱いですか?」
「………………」
「この人が私の実の父親なんて悲しくなるわ。娘を信じない父親なんて」
「………………」
「私はそんな面白くない本など借りませんよ。この国の軍事力など知ってどうするというの?政治関連にも興味がないのに。私が読む本を忘れてませんか?貴重な遺跡や絶滅種などの図鑑に他国のお祭り事。そして料理の本にファンタジーな物語。エッセイや博士の本。私はワクワクしたいのです。政治関連の本はワクワクしません。暗い内容は滅んでしまえ」
「………………」
「私の部屋を探したらいいでしょう。何も出てこないですよ。借りていないのですから。読んだこともないのに。学校でも政治の授業が嫌いでしたのに。こんなこと言いたくないですが見事な赤点でした。先生も素晴らしい赤点だと褒めて下さいました。あそこまで完璧な赤点は私が初めてだそうです」
「………………そうだった。確かにそうだったな。そうだよな。そうに違いない。変なあだ名をつけられてしまってもお前はそんなことしないな。うん。そうだ。絶対にそうだ。お前は政治に関することには興味を示さないな。教科書も1ページも読まなかった。何度も先生に呼ばれて泣かれて。父さんは悲しい。そして恥ずかしい」
「………………で?どうしてそのようなことに?」
「ルーカス殿下がお読みになりたいとおっしゃられた」
「なるほど。本を探したが見つからなかったということですね?機密書は貸出しできませんからね」
「そうだ」
「盗まれましたね。警備が甘いのでは?甘々ですね」
「………………陛下に報告してこよう。悪かったな。大臣から責められてしまってな。気が動転してしまった」
そう言ってお父様は出ていった。
本当に甘々だ。
騙されちゃって。
この国の政治関連は全て読んでしまった。
優秀なメアリがいるからスムーズに読むことができた。
「アメリア様。あの本は何重にも鍵がついてました」
「そうね。その鍵を取ったのね。なかなかやるじゃないの。疑い晴れるかな」
「本=アメリア様ですからね。ただ、アメリア様は政治関連の本は読まないと周りは知っております。嘘ですが」
「重要機密を知っている令嬢に監視が付かないわけがない。嘘は大事」
「おバカな令嬢とも言われてますからね」
「………………」
本当に失礼だ。
その辺の令嬢より頭いいから。
無駄なことに脳みそ使ってないから。
「久しぶりに見た。お父様」
「はい。相変わらずでしたね。元気か?の一言もございません。ですが、アメリア様を嫌っているわけではないです。不器用ですが可愛い娘とも思っております。そこが腹立たしいですが。いっそのこと嫌ってくれていたらいいものを」
「今日は気分が悪い。もう本で発散するから」
「はい。どうぞごゆっくり。何かあればベルを鳴らして下さいね」
メアリは一礼して部屋を出て行く。
今日は朝まで読書よ。
この嫌な気分は本で失くすのが一番!
今、とてもいいところなのよね。
もう来ないでほしい。
証拠もないくせに。
イライラしている所為が読むスピードも速い。
3冊はいけちゃうかも。
夕食の時間になっても本を読むのを止めることもなくただ読書を楽しんだ。
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