第64話

イケメンさんだよね!

あっちからこっちからいろんな女の子から声をかけまくり、そして青年は大人の階段を上っていくのです。

あれ?話しがずれているよね。

お昼に大量の肉を食べた所為か、まだ残っている感覚がする。

夕食の時間になってもその感覚が消えることはなく軽いものしか食べられなかった。

明子さんと駿君は普通に食べていたけどね。


「明日は11時に出発ね。寝坊しないように」


明子さん。

ロイ君に言ってくれ。

彼の所為で大変なんだから。

心配しまくりのまま部屋に戻り電気を付ける。

そこで私はあれ?と思う。

部屋間違えたか?

一度部屋を出て確認。

うん、間違ってない。

部屋の中に入って確認。

うん、間違ってる。


「な、な、なんですとーーーーっ!!!」


ロイ君の部屋になっとる!!

いや、私の荷物はあるけどロイ君の私物が増えている。

ベッドの上にはロイ君の私物であろうタオルケットと枕。

空気清浄機と加湿器。

ロイ君の洋服もソファーに置いてある。

シャワーを使ったのか湿ったバスタオルもあった。


「何驚いているの?」


「ロ、ロ、ロイ君!!君は何をしてんの?ここはロイ君の部屋ですか?おかしいでしょ」


「面倒だったから。あまり動きたくないから。大丈夫。俺の荷物って少ないから」


「いや、そこじゃないよね?全然違うよね?」


「ゲームやったあとはこの部屋で寝ちゃうからさ。自分の部屋まで戻る気力がないから」


「………………おかしいから」


ズレテル。

この人おかしいから。

………………。

女性に興味がないと言っていた明子さんだが、こういうことだろうか。

部屋に女性と二人きりになってもそういうことには発展しないということ。

つまり興味がない。


「はい。やろうよ。もう少しで勝てそうだから。明日は日本だし。今日しかないから」


「………………………………睡眠妨害者がここにいる」


「早く」


聞いてねぇな。

マジで聞いてないわ。

寝させてよ。

目覚まし時計だけセットしとこうか。

ロイ君のゲーム愛は怖いくらいだ。

その集中力は凄いと思う。

深夜を回り3時頃だっただろうか。

ロイ君はついに私に勝った。

その喜びは少年のようにはしゃぐほどに。

あぁ、これで寝られる。

そう思った瞬間すぐにブラックアウト。

次の日、目覚ましの音で起床。

目の前には熟睡しているロイ君。

当たり前のように隣で寝てるのね。

自分の枕とタオルケットまで持ち込んで。

着替えも準備してさ。

同棲じゃないんだからさ。


「ロイ君。起きて。出発まであと1時間だよ。起きて!!寝坊助」


「んーーーっ」


「お前は子供か!!嫌がるな!起きろーーーっ!!!!!」


タオルケットを引き離し枕を取り上げる。


「乱暴すぎる」


「おはようロイ君」


不機嫌なロイ君はどうでもいい。

寝坊なんてできないのだから。


「早く着替えて!いや、私が先にシャワー浴びるからちょっと待ってて」


「ん」


寝るなよ!!

起きてろよ!!

急いでお風呂場に突入してカラスの行水にように上がる。

案の定、ロイ君はベッドの上で気持ちよさそうに寝ていた。

寝るなよ。

日本に行かないのか?


「ロイ君。日本のゲーセン行かないの?」


「行く!」


ガバッと起き上がったロイ君のそれからの行動は早かった。

つーか、部屋から出ろよ。

なんで私はロイ君に遠慮気味なの?


「23番。準備出来た?」


「ロイ君。それだけ?」


「うん」


着替えとか大丈夫?

日帰り旅行じゃないからね?

国外だからね?

その小さいキャリーケースに何が入るの?

ここが男と女の違いなのか。

玄関まで行くと明子さんがニコニコ顔で待っていた。


「二人とも仲良しね。どこまで進んだの?」


何も進んでませんが、何か?

ゲームしてそのまま寝てしまっただけですが?

アメリカまで来てゲームするとかさ。

日本でも出来るよね。


「早く行くぞ!飛行機の時間があるからな!!」


そうだね。

日本が恋しいよ。

いや、自分の部屋が恋しい。

実家が恋しい。

あっ、帰りのあのファーストクラスだ。

何を見ようかなぁ。

うふふ。

優雅なフライトの時間だ。

空港ではお土産を買い込みドキドキワクワクで飛行機に乗り込む。

ロイ君はゲームをして駿君はアニメを見て明子さんはシャンパンを飲み。

そして私は洋画を見ながらオレンジジュースを飲みながらお菓子を食べる。

幸せな時間だ。

あぁ、この幸せが長く続かない。

明日はお仕事だ。

…………………。

やめよう。

今はこの泣きたくなるシーンだけに集中しようではないか。

【私もこんな恋愛をしたくなる】

どこの誰だろうか。

まずは男を作れてと言った奴は…………………

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