第63話
バスに乗るのは久しぶりだ。
車があるとバスとか電車とか使わなくなるからな。
「今日は駿が好きなお店に行くからね。お肉料理が有名なの。ど派手で。その帰りにショッピングして帰ってきましょうね」
駿君の好きなお店か。
肉料理でど派手とかどんな料理なの?
分厚いステーキとか?
明子さんが行くところだからおいしいのは当たり前だろう。
あとは見た目だね。
明子さんが言っていたど派手という意味が分かったのはお店に入って料理が運ばれてきたときだ。
スライスされている肉が皿から零れている。
皿はどこだろう?えっ?埋もれているの?
えっ?肉メインだから皿を見せる必要はない?
どこまでも肉。
肉のみの肉料理。
ご飯とはパンとかもない。
飲み物と肉。
柔らかい肉。
駿君も明子さんもおいしそうに食べている。
うん。おいしいよ。
いつも私が食べている100g98円とかじゃないのは確かだよ。
とろけるうまさだよ。
でもさ、限度というものがあるよね!!
肉好きには堪らないけどさ。
………………。
肉の中からハンバーグが出てきたけど!!!
まさかと思いハンバーグの下にはステーキ。
うん、おいしいけどね!
全部食べられるわけもなく残りは明子さんに食べてもらった。
大食い選手でもなんでもないからさ。
当分、肉はいいかなぁってくらい食べたよ。
うぷっ、戻ってきやがる。
「おいしかったわねぇ」
「うん!おいしかった」
ここで新たなことが発覚。
この親子はありえない胃袋をもっているということに。
隠していたわけではないと思うけど。
普通の量でも満足はするらしい。
「さて、お買い物ね。23番。ここからが本番よ。さぁ!!」
洋服や雑貨を見るのも買うのも楽しいが、ここまで荒々しい感じで見たり買ったりはしていない。
明子さんにとって買い物は戦いのようだ。
いや、食材の安売りなら私もイノシシみたいに突き進むけどさ。
それとこれとは別もんだ。
安売りしてるわけでもないし。
明子さんが案内する雑貨は確かにかわいい。
お値段もお手頃価格。
観光向けではなく地元の人からも人気がある雑貨らしい。
「あら、これかわいい。こっちのスタンドも。迷っちゃう」
きゃははうふふと聞こえてきそうな感じですね。
明子さんが少女のように思えてくる。
駿君はやはり男の子でこういうところには興味がないらしい。
つまらないわけでもなく明子さんの後ろをくっついている。
まぁ、せっかくだから見るけどね。
こっちのは冷蔵庫に磁石でくっつけるタオル掛け。
こっちは花柄のコースター10枚入り。
日本円で130円。
日本と同じくらいかな?
明子さんの雑貨巡りは止まらない。
この通りは雑貨激戦区でもあるらしく隣も雑貨店という。
いつの間にか駿君と私は荷物持ち。
いや、私も買ってはいるけど。
ここまでたくさん買うことはしない。
そこまでお金を持っていない!!!
「まぁ、こんなものよね。帰りましょうかね」
「「はーい」」
やっと帰れる。
きっと駿君と同じ気持ちだと思う。
帰りは荷物が多いからタクシーを捕まえて帰宅。
家に戻るとロイ君が寝間着姿のままリビングで寛いでいた。
「おかえりって………………そんなに何を買ってきたの?また、ガラクタばかり。敏さんに怒られても知らない」
「ロイ。なんて恰好なの!着替えなさいよ」
「さっき起きたから」
「夕方まで寝てたの?寝すぎだから」
「んーー。寝てて良かった。荷物持ちはごめんだ」
ロイ君、今まで寝てたの?
もうニートだよ。
夜寝られるの?
あっ、夜は寝ないでゲームだっけ?
私を巻き込む予定だね?
「着替えなさい。そのまま夕食に参加は認めないからね!それと明日日本に行くから準備をして」
「うん」
明日帰るの?
ほぅ、なら今日はしっかり休まないとねって出来ないか。
ロイ君襲来が待っている。
「お母さん。俺、お腹空いたよ。あと疲れた」
「あら、ごめんなさい。連れまわしちゃったからね。すぐに夕ご飯にしましょうね。今日は敏は遅くなる予定だから食べちゃいましょう」
「うん」
ロイ君は着替えるために自分の部屋に戻り駿君はご飯ができるまでリビングで宿題。
その宿題内容が凄い。
全部英語で書かれている。
馬鹿な私では理解できない。
駿君が言うのは歴史についてらしい。
絵はないのですか?
文法とかなんてもう忘れているし。
高校で習った英語は古い。
つーか、全然使えない。
日本に戻ってきたら駿君はモテるね。
青年の駿君はイケメンさんだと思うし。
うんうん。
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