第62話

ゲーム機をテレビに繋いでコントローラを私に渡す。

マジでか。今夜も意識飛ぶまでやる感じですか?


「何も食べないのは辛いと思って準備させておいたから。一緒に食べながらやろう」


わぁ、おいしそうなビーフシチューですなぁ。

いやいや、この空間は何?

テーブルの上にはおしゃれな雰囲気を醸し出している料理が並ぶ。

涎が出ちゃうほどおいしそうだけど。


「寝ちゃダメだから」


「私を寝させてはくれないのかい?このままだと睡眠不足で倒れる」


「大丈夫。明日はお昼まで寝てなよ。俺もそのつもりで考えているし」


「お肌に悪いからさ」


「大丈夫」


「いや、悪いからね!!ロイ君には分からないけど悪くなるもんなの!!」


「始まったよ。寝たら頭を叩くからね」


「暴力的すぎる。しかも、ゲーム始まっているし。勝手にキャラクター決められているし。私だけアイテム少ないし。恥ずかしくないの?」


「………………………………」


無視ですか?都合が悪いところは無視ですか?

あっ、このビーフシチューおいしい。

このポテトサラダもおいしい。


「おいしい?」


「うん。おいしい。流石シェフが作る料理」


「でしょうね。おいしくなかったらクビにされてる。料理ばかりに夢中になるのはいいけどゲームは始まっているからね」


「あぁ!!卑怯者!!」


「あっ!いきなり殴るなんて」


「ゲームはすべていきなりだ!!そっちが悪いよね!」


雰囲気に乗せられるのは悪い。

私は雰囲気に乗せられちゃうのかも。

気付けばあっという間に深夜すぎになり限界までゲーム対戦をしていた。

そして、この前と同じようなことになる。

目を開ければロイ君の綺麗な顔。

まつ毛長いなぁ、とか思っているのだが………………

あれ?この前より近いよね?

あれ?ちゃんとベッドで寝てる。

あれ?私ベッドまで自分で?

あれ?近くないかな!?

あれ?あれ?あれ?あれ?

なぜ、抱き枕状態なんだ!!

でも、なんか得した気分でもある。


「ぅ………………ん」


「ロイ君?起きた?」


「ぁーーーおはよ」


ロイ君の目が半分開いてる。

不細工な奴がやったら不細工だが、こういう容姿が整った人がやると凄い破壊力だ。

鼻血が出そうでヤバイぞ。

ロイ君、この前みたいに驚かないの?


「ロイ君。近いね」


「………………ベッドまで運んだのはいいけどそこで俺も力尽きたみたい。今何時?」


「えっと、もう少しでお昼だね」


「そっか。じゃぁ、あともう少し寝かせて。まだ眠いから」


「私は起きる」


「ん」


ベッドから降りてお風呂に直行。

そこでふと思う。

あれ?この流れはなんだか恋人関係みたいじゃない?って。

ヤバイ。なんだか欲求不満みたいじゃないか。

お風呂から出るとロイ君はまだ寝ていた。

若いものは長く寝られるからねぇ。


「ロイ君。そろそろ起きなよ。お昼ご飯の時間だよ」


「んーーーっ」


お前は子供か!?

何唸っているの?

しっかりしろよ!

つーか、私の部屋ですけど!!

自分の部屋で寝なよ。


「まだねるぅ」


「お前は小さい子供か!?」


もういいよ。

私の目はぱっちりだし。

駿君のところでも行くか。

つーか、私仕事でこっちに来たわけだから。

ロイ君を置いて部屋から出る。

リビングに着くと駿君が明子さんに甘えているところだった。

大好きだねぇ。マザコンになりそうで少し怖いけど。


「あらぁ、やっと起きたの。おはよう23番。ロイはまだ寝ているの?」


「おはようございます。ロイ君はまだダメダメです」


「でしょうね。ロイは置いてこれから外食に行くことにするから。雑貨屋さんとかたくさんあるし。女の子が好きなものがたくさん!!楽しいから」


ロイ君は置いてけぼりですか。

可哀想な感じもするけど。


「23番。お前はいつまで寝てんだよ!!もう昼じゃん!ロイ兄ちゃんと一緒でお寝坊さんだな」


「駿君。これには事情があるのだよ。分かる?ロイ君のゲーム好きには困ったものだね。深夜すぎても寝かせてくれないとか」


「ロイ兄ちゃんはゲーム大好きだからな。強いだろ」


「ははっ!私のほうが強いのだよ!!私って最強だよね」


「ゲームで最強でも意味ないな。早く行くぞ!お腹減った」


なんだろう。

図星で悲しいな。

明子さんはクスクス笑っていたが笑い事ではない。

ここにいる間ずっとこんな感じか。

辛いな。

リビングから出て玄関に向かう。

車で行くのかと思ったら歩くらしい。

交通機関を使って観光気分。

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