第59話

駿君よ。

そう言われてもね。

給料から差し引くとかさ。

おいおい、聞いてないぞ。

モヤモヤした気分のまま2時間。

やっと目的地に着いたらしい。

そして、たくさんの車。

本当に平日でもいっぱいなのね。


「凄いな。流石今話題の人気テーマパーク」


やっと止められたと思ったら次は敷地に入るためにたくさんの行列。

あぁ、これに並んで中に入るのね。

あれ?

もう始まっているよね?

なのにここから並ぶの?


「凄いな」


「凄いわね」


「すげぇ」


「…………………」


ロイ君や。

ここでもゲームですか?

マジかよ。

行列に並ぶこと30分。

やっと中に入ることができた。

さて、一緒に行動するのかと思ったら違うらしい。

ロイ君が乗りたいものと駿君が乗りたいものが遠い。

そして、身長制限がある。

ここで別行動という選択になった。

駿君はもちろん両親と一緒。

私はロイ君と一緒。

こんだけ人がいるんだもんね。

自分が乗りたいものが乗れなくなりそうだ。

まぁ、それだけじゃないが…………………

『あとはお若いので、ニシシ』

『そうだな。邪魔しちゃ悪いな』

余計なことをしないでもらいたい。

本当に似たもの夫婦だな。


「23番。手を繋ぎましょう。これだけ人がいたら逸れます。それに、迷子になったら終わりだよ。英語話せないでしょ?」


「ソウデスネ」


さり気なく手を差し伸べるロイ君に関心しちゃうよ。

これが、日本人だったら違うんだろうなぁ。

ハーフだから似合うのかなぁ。

ロイ君が乗りたいものは絶叫系ばかり。

絶対に駿君が乗れないものだね。

それにしても、並ぶのかい!

何々?180分待ち?マジでか?


「23番?どうかしました?」


「これに並ぶので?」


「いいえ。並ばない方法がありますよ。これです。優先チケットです。明子さんから渡されました。これがあればすぐに乗れます。でも、時間が決められているので時間になったら乗れます」


「便利なものがあって良かったです。これに並んでいたら辛い」


「時間になるまで他のに並びますけどね」


「…………………」


他で並ぶことになるのねぇ。

まぁ、しょうがないか。


「そうですねぇ。少し早いですけどお昼にしますか?早く食べたほうがいろいろと動きやすいですから」


「そうですね!そうしましょうか!!!」


「あと、敬語やめません?俺、23番に使うのが馬鹿らしくなってきた」


「…………………賛成。私も普通に話すことにするよ。さっきの愛車事件でどうでもよくなってきた」


「ご愁傷様」


「いや、死んでないからね。お陀仏になってないから」


「はい、レッツゴー」


ロイ君は私の手を引っ張り近くのレストランに入る。

まだお昼には早いためかそんなに混んではいない。

席に案内されメニューを渡される。

えぇ、読めませんよ。

それが何か?


「ロイ君。なんて書いてあるの?」


何?

こいつ馬鹿だなって顔しないでくれない?

読めないもん!

しょうがないじゃないか!!


「セットメニュー。肉や魚か選べる。パスタもあるけど」


「そっか。パスタがいいな。カルボナーラ」


「分かった。飲み物は?」


「水でいい」


ロイ君は近くにいた店員さんを引き留めて注文をする。

英語をペラペラ話す人ってなんだかキラキラしてるよね。

憧れ的な?

語学堪能な人を彼氏にしたいって一度は思う。

まぁ、無理だけどね。

というか、彼氏という存在を作るのが無理だな。


「23番って絶叫系大丈夫?今更だけど」


「本当に今更だね。別に大丈夫だよ。何回転しても大丈夫」


「そんなに回転しないから大丈夫。食べ歩きも抵抗ない人?」


「ないない。というか好き。遊園地に行くと必ず何か食べてる」


「俺も食べ歩きするほうだから良かった。嫌いだったら君の対応を考えないといけなかったから」


どんな対応を?

避けるの?

自分には合わない人だと思ったら避けるタイプですか?

頑張れよ。

それじゃ、社会でやってけないぞ。

潰されるぞ。

ドロドロな人間関係で潰されるぞ。

でも、ロイ君の場合は女性関係で嫌になりそうだね。

容姿がいい人って得するところもあるけど損するところもあって大変だねぇ。

やっぱ、普通がいいよね。

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