第57話

テーブルの上にはたくさんの料理。

しかも和食!!

味噌汁だ、白飯だ、漬物だ、納豆だ!!

あぁ、日本を感じる。

でも、チラッとロイ君を見る。

アメリカ暮らしのロイ君だから、日本食はどうなのだろうか。

食べられるのかい?

だが、私の心配は必要なかったらしい。

普通に食べている。

刺身を黙々と食べている。

納豆も問題ないらしい。

あっ、肉じゃがおいしいな。

この煮物もおいしいな。

から揚げもおいしいな。

ほうれん草の胡麻和えもおいしいな。

なんだろう、幸せだわぁ。


「駿。宿題はしっかりやってるか?」


「やってるやってる」


「やってないな。ダメじゃないか。しっかりやらないと。先生に怒られるぞ。ロイのようになってしまうぞ」


「やるよ!ご飯食べたらやるから!!」


「よし、約束だ」


駿君、宿題全くやってないよねぇ。

あらぁ、明子さんの笑顔が怖いわぁ。

対照的に敏さんがよしよしいい子だと言っている。

おーい。息子馬鹿だ。


「ねぇ?なんで俺?そこは俺の父さんじゃないの?」


「ロイも宿題なんてしてなかったじゃないか」


「俺は無事卒業したけどね。宿題なんてしなくても卒業できるよ」


「…………………頭の良さは母親か」


ロイ君は頭がいいのか。

だよねぇ。

そんな感じだよ。

でも宿題はしようか。

私でもしっかりやったよ。

じいちゃんに教わりながらね。

じいちゃん頭いいから。


「23番。真人君の屋敷で働いているんだってね。大変だね。若いのに。みんな年上でしょ?」


敏さんよ。

この屋敷にも家政婦いるでしょうよ。

しかも、若い人いるでしょうよ。

多分。


「いえいえ、掃除も洗濯も嫌いではないので。先輩家政婦はみんな優しいですし」


「それは良かった。真人君担当だから心配でね。まぁ、新人はすぐにやめてしまうからさ。いや、やめさせられる?って言ったほうがいいのかな。駿の面倒をよく見てくれるって聞いたから。気になっていたんだ」


なんだろう。

怖いことを聞いたかも。

私、駿君がいなかったらすぐにクビだったか。

ご飯を食べ終えたらみんな各々の部屋で休むらしい。

私も部屋に戻りシャワーを浴びて部屋着に着替える。

あとは寝るだけだね。


「うわぁ、ふかふかなベッドだよねぇ。最高だ」


「それは良かったですね」


「ホントホント…………………んぎゃっ!!!」


声が聞こえてベッドから飛び起きる。

振り向くとロイ君がいた。

手にはゲーム機を持っている。


「な、な、どうしましたか?」


「ノックしても返事がなかったもので。で、ゲームしましょう。暇?暇だよね。少しでいいから」


「ロイ君。そのゲームって最新の?」


「うん。仲よくしようと思って」


「…………………」


嫌々ならいいけどね。

ロイ君はゲーム機をテレビに繋ぐ。

ゲーム好きなんだね。

意外だよ。


「はい。どうぞ。格闘ゲームだけど。できますか?」


「大丈夫です。弟とよくゲームをしていたので」


「弟さんいるんですか?だから、面倒見がいいのか。俺も妹がいます。我儘な妹ですけど。駿と同じで真人君のことが大好きみたいです。しかも、恋人になりたいとか。馬鹿ですよね」


コントローラを握り締めていざゲーム開始。

ゲームで仲良くなろうという考えはいいかもしれないが…………………

ゲームを初めて50分。


「なんで、なんで、なんで!!なんでこんなに強いの!?このゲーム初めてだったよね?なんで?もう一回やろう!これで最後にするから!」


「いや、これで終わりにしましょうよ。眠いので」


「ダメだ。もう一回。勝てるまで」


ロイ君や。

白熱した戦いだったのは分かるけど。

敬語はどうしたのさ。

もう君の本性丸出しだよ。


「ロイ君。これで最後にしましょうね」


「勝てるまで」


…………………。

眠いのだよ。

お願いだからそこは気遣いを持って。

ロイ君はゲームが本当に好きらしく勝てるまでやるつもりだ。

もう深夜ですけどぉ。

私の体力も限界になり瞼が段々と下がっていく。

そして、完全にシャットアウト。

こんなに眠気が襲ったのは初めてだった。

あぁ、ベッドで寝たかった。

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