第51話

っていうか、なんでボタン外して胸元出してんだよ。

隠せよ!

朝っぱから変な色気を出してさ。

何をしてんだよ。

…………………。

あの、下は大丈夫だよね?

丸出しではないよね?


「まぁ、部屋から出なかったからなぁ。部屋から出てたらたくさん可愛がってあげてたよ」


何を可愛がっているのでしょうか!?

それか聞いてはいけないことだよね!

この男はマジで変態すぎるから!!

もう嫌だよ。

早く置きたいよ。

嫌なことが重なると凄く実家に帰りたくなる。

ホームシックではないけど、人の温もり?っていうのが恋しくなる。


「あの、真人様」


「ん?なぁに?」


「苦しいです」


「抱きしめているからね。温もりって最高だよね」


「…………………そうですね」


普通の人なら離すと思う。

この人は普通ではない。


「んーーっ、サイズ感ぴったり」


真人様はギュゥッと抱きしめる力を強くして私をさらに引き寄せる。

これ以上くっついてどうするのだ。

抱き枕状態だ。

私の足の上には真人様の足が乗っていて腰には腕を回され身動きが取れない。

あと一時間だ。

耐えろ。

そしたら立花か楠のどちらか来る。

それまで耐えろ!


「んふふふっ」


ゾワ―ッと鳥肌が襲う。

急に不気味な笑い方をする真人様が引く。


「ねぇ?23番」


「は、い」


「今、この部屋には俺と23番だけだねぇ」


「…………………」


「これって楽しいことができる環境じゃないかなぁ?朝から共同で運動とか最高じゃない?ん?」


「…………………」


「こんなに密着してたらなんだかムラムラしてきちゃった」


ヤバイ!!!!

めちゃくちゃ変態じゃねーか!!

楠以上の変態者だ!

それに、さっきの色気がさらに増した!!

レベルが一気に跳ね上がったけど!

もう…………………嫌。

実家に帰りてぇ…………………

バンッ!!


「おはようございます!真人様。本日は朝からスケジュールが詰まっておりますので早めに起こしに来ました。さぁ、お着替えを!」


「くすのきぃ…………………なぁに邪魔してんの?」


「よく分かりません。早く起きて下さい」


「…………………部屋に立花を呼べ。準備は立花にさせるから」


「かしこまりました」


真人様は私を離してベッドから出る。

楠の隣を通りすぎるときに舌打ちをしたが聞こえなかったことにしとこう。

部屋から出て行ったのを確認したあと力が抜けて大の字に寝そべる。


「そんなに足を広げて。襲ってほしいの?」


「…………………」


「えっ?無視?大丈夫?」


「…………………」


「本当に大丈夫?」


「楠さん」


「ん?」


「ありがとうございました」


「…………………うん。まぁ、ギリギリだったけどね。23番も早く支度をしてね」


「はい」


楠が出て行ってから私もベッドから出る。

自分の部屋に行って準備と朝ごはんをゆっくり食べる。

時間になるまでは部屋でまったりしていてもいいよね?

コーヒーを飲み家族の海外に行くことを話したりお土産も頼まれたりと穏やかな時間が流れた。

出発の時間まであと1時間。

早めに行動しとこう。

何か言われそうだしね。

キャリーケースを引っ張りながら駿君の部屋に向かう。

その途中で立花に会った。

立花はなんだかフラフラと歩いて危ない。

顔も赤く熱でもあるんじゃないか?


「立花さん。おはようございます。大丈夫ですか?顔が赤いですけど。風邪ですか?」


「あぁ、あなたですか。おはようございます。なんでもありませんよ。そろそろ出発の時間ですよね?早く部屋に行きなさい。駿様がお待ちですよ」


「分かりました」


立花はフラフラしたまま通りすぎて行った。

大丈夫なの?

なんだか苦しそうだったような。


「23番!!おはよう!」


「駿君。おはよう。よく眠れた?早起きしちゃったみたいだね」


「楽しみでな!早いけど行くぞ!準備はいいな!?」


「うん。ばっちりだよ」


可愛いなぁ。

駿君は嬉しそうに廊下を走る。

まさか、アメリアに行くことになるとは。

しかも仕事で。

しかも遊び感覚。


「楠!23番来たぞ!」


「はいはい。準備は大丈夫?早いけどそろそろ出発するよ」


「はい。大丈夫です」

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