第49話

何を分かってないって?

お前は何を分かっているのさ。

これ、セクハラ行為だからね。

分かる?

訴えられるからね。

分かっているのかい?

クソガキ。


「23番は、黙って俺の言いなりになればいいの。黙ってこのままでいいの。この屋敷の家政婦ならご主人様が中心。分かる?俺の命令は絶対だからね。言われなくても分かってると思ったのにさ。嫌だって言うならここで服を破り捨ててレイプしちゃうよ」


危ないこと言いやがった!!!

本当にこんな奴が医者になっていいのか!?

いや、駄目だろ!

医者がレイプしちゃだめだろ!

あっ……………………

22番の話がなぜか浮かんできた。

洗濯の中身にアレがあったこと。

……………………。

……………………。


「でも、ここだと駿にバレちゃうね。違う場所に移動しないといけないね。子供には悪影響だから見せられないね。それに今は持ってないからなぁ」


何?

ヤルことになってる?

えっ?

もうそんな流れなの?

つーか、持ってないってアレのことだよね。


「真人様」


「ん?」


「申し訳ございませんでした」


「……………………ねぇ?23番」


「はい」


「23番の初恋ってどんな人だった?」


初恋?

なぜ、そんな話になるの?


「俺の初恋はね、たくさんの人からとても人気がある人。男女関係なく人気でねぇ。会話するだけでドキドキが止まらなくなるくらい好きだったの。まぁ、初恋は実らないって言うけどさぁ。特に付き合うこともしないまま保育園を卒業しちゃった。23番はどうなの?」


保育園ですか。

早いですねぇ。

お姉さんは遅かったよ。

多分、周りの影響だと思うけど。

田舎の田舎すぎて、周りの人が家族みたいな感じで。


「中学生のときですね」


「年下?年上?」


「年上です」


「へ~ぇ。年下かと思った。どんな人だったの?」


「普通の人です。頭も普通で運動神経も普通でした」


「なんでそんな人を好きになったの?」


そんな人扱いはやめてくれないかな。

私の初恋の人だったからさ。

本当に普通の人だったけど。

特技もなくてイケメンでもなくて。

みんなの人気ものとかじゃなくて。

それでも、なんだかこの人好きだなぁって思ったわけで……………………


「ねぇ?なんで?」


「私には素敵に見えたので。会話をすると楽しかったです。話しが合うというか」


「ふ~ん。その人は今何をしているの?」


「実家の林業を継いでますよ」


「結婚は?」


「まだ独身だと思います」


「なんだか詳しいね」


「近所ですので」


「近所?」


「はい。近所と言っても離れてますが。田舎の中の田舎なので。お隣さんがとても遠いので。こちらだと歩いて数歩ですが。私の実家は歩いて7分です。嘘もつけないほど仲良しなので、なんでそんな情報まで知っているの?ということまで知り尽くしてます」


「へ~ぇ。近所のお兄さんだねぇ。幼馴染ってやつ?」


「そうですね。小さい頃から一緒に遊んでました」


「よくある話だよね。近所のお兄さんを好きになるって話」


「そうですか?」


「うん。そっかぁ。独身なんだねぇ」


「…………………はい」


何?

独身が何?

なぜ、独身に興味が?


「23番」


「はい」


「もし、そのお兄さんから結婚してって言われたらどうする?」


「はい?」


「初恋の人に言われたらどうする?」


「どうすると言われましても…………………」


そんなことあり得ないし。

というか考えたことなかった。

結婚してって言われたらねぇ。


「ねぇ?どうするの?断る?それとも受ける?」


「その時に恋人がいない場合は受けますね」


「受けるの?受けちゃうの?そんな簡単に?」


「…………………はい」


「ダメだよ。初恋の人でも危機感を持たなきゃ」


お前は何がしたいんだ。

もう、黙って寝てろよ。

一生寝てろよ。

永久に。


「男は飢えた狼だからね。田舎の男なら尚更だよ」


お前がそれを言うのか?

あいつはそんな奴じゃないから!

お前と一緒にするなよ!!

駄目だ。

この男は駄目駄目人間だ。

クズ男だ。

この男が医者になるとは…………………

終わったな。

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