第48話

「ねぇ?23番。君の心臓、とても速いね。そんなにドキドキしてるの?俺の心臓の音も聞いてごらん。俺のも速いから。俺もドキドキしてるよ。一緒だね」


どうでもいい!!!

いや、恋人だったらドキドキもんだけど。


「真人様。そろそろ、本当にお休みの時間では?こんなことしては立花さんに怒られてしまいますよ。ただの家政婦に」



「ん?ただの家政婦ねぇ……………………ただの家政婦がアメリカに行くかな?ただの家政婦が一緒にプールで遊ぶかな?ねぇ?どうなの?23番。君の名前はなんて言うの?俺に教えてくれないかな?」



「……………………」


真人様の抱きしめる力が強まったのが分かった。

冷たい話し方。

恐怖心を煽る言い方だ。


「ねぇ?23番。駿と仲良くなるのはいいことだよ。でも、仲良くしすぎるのも駄目だよ。君はただの家政婦なんだよね?だったらさぁ……………………俺の言いたいこと分かるよなぁ?」


サ―ッと全身が固まる。

この人、めちゃくちゃ怖い!!

駄目だ。

私の嫌いなタイプだ。

つーか、こういうタイプが受け付けない。

ニコニコしてるけど本当は怖いってタイプが嫌だ。


「いい匂いだねぇ。ただの家政婦が俺と同じシャンプー使っているのかぁ。ただの家政婦が俺と一緒に添い寝かぁ。ただの家政婦が」


ただの家政婦という言葉とても怖いぞ。

真人様はただの家政婦がなんで一緒にこの部屋にいるのかと言いたいのかもしれない。


「なんだか、眠くなってきた。23番じゃなくて俺が眠くなるなんて。このまま一緒にねちゃおうか。少し狭いけど寝られる大きさだし。大丈夫だよね。もっとくっつくけど」


遠慮させて下さい!!

全力で遠慮させて下さいませんか!?

本当に誰か来て。

なんで、こういう時に立花は来ないのかねぇ。

マジで使えない。

つーか、男は全員使えない。

なんだか、凄く実家に帰りたくなってきた。

帰っていいですか?

いや、帰って何をする?

弟が実家を継ぐなら私はどうしようか。

つーか、真人様の息遣いが聞こえますけど!?

気持ち悪い。


「23番は子供みたいに体温高いね。女の子だから柔らかいし。男と違ってゴツゴツしてないから抱き心地は最高だよ。ほら、もっとこっちにおいで」


あれ?今の例え話おかしくない?

男と違って?

…………………。

なぜ、男に例える?

ズルズルと私の体が引っ張られてしまい、すっぽりと真人様の腕の中に納まった形になってしまった。


「23番。こっちを見てぇ。ほら、見ろよぉ」


強引に顎を掴まれ上に向けられた。

それが首に負荷がかかり絶妙に痛い。

絶対、私の顔歪んでるね。

だって、痛いからね。

つーか、私より年下のクセに。

…………………。

そう言いたいけど言えない!!!


「このまま体を温めあって、温もりを感じながらお眠りするものいいね。あぁ、そうだ。足、本当に大丈夫だった?我慢してない?」


「大丈夫です。どこも痛くないので」


真人様の手が少し移動しているのが分かる。

背中にあった手が腰まで下がってきている。

私の体は鳥肌で凄いことになっているな。

ゾワゾワが半端ない。


「そろそろ、本当に寝ようか。駿のためにも寝坊しないように。おやすみなさい。23番」


真人様はそう言って目を閉じた。

えっ?このままマジで寝るの?

誰か冗談とか言ってくれないの?

えっ?誰も助けにきてくれないの?

というかさ、執事たちはどうした?

楠木と立花はどうした?

おい…………………

お前等のご主人様を引き取りに来いよ!!!

ご主人様が戻らないのが心配でしょ!?

なーんで、迎えに来ないの?

怪しいとかあるでしょ?

上司は部下を守るもんでしょ!

見捨てるのか?

見捨ててもいいってか?

なんとか、この体勢だけでもどうにかしたい。

ここで、駿君が起きてくれればいいのに。

トイレとかで起きてくれないかな?

よく知らない男にこんなことされたくないよね。

正直のところ。

本当に寝てる?


「あの、真人様?まだ、起きてますか?」


「う~ん。なぁーに?」


眠そうな声でしゃべらないで!!

マジで寝そうだよね?

この人、マジで寝そうだ!


「とても言いにくいのですが……………………」


「うん?」


「せめて、この体勢はやめていただけませんか?寝づらいので」


「俺は寝やすいよ」


「……………………」


「23番さぁ……………………分かってないよねぇ」

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