第47話

「ねぇ?23番」


「はい」


「彼氏はいるのかなぁ?」


「おりません」


「ふ~ん。結婚したことある?」


「ないです」


「そっか。バツはないのかぁ。んじゃ、楠と立花のどちらがタイプ?」


「……………………」


「ほらぁ、早く答えてよぉ」


タイプ?

楠と立花で?

いや、どっちも嫌だ。


「どちらも素敵な男性ではございますが」


「うん?」


「仕事の上司をそのように考えたことがございません。なので、その質問にはお答えできません」


「ふ~ん。二人とも顔がいいからさぁ。若い君なら心が踊っちゃうと思ったのにな。なら、23番はどんな人がタイプなの?」


「体が丈夫な人が好きです」


「丈夫?」


「はい。体力がないと私の実家のお手伝いができません」


「あぁ。そういうことかぁ。丈夫な人は大事だよねぇ」


「はい。あの、真人様?もうお部屋にお戻り下さい。お勉強やお仕事などが大変だとお聞きしました」


「ねぇ?23番」


「……………………はい」


「駿は君のことばかり話すようになったよ。駿は君のことが大好きみたいだ。俺は寂しいなぁ。駿は君のこと知ってるからいろんなこと言ってくる。俺は君のこと知らないから聞くだけなんだよねぇ。だからさ?俺に君のこと教えてくれないかなぁ?駿が知らないこと全部!!」


「私のことですか?」


「うん。君のことだよ」


ギシッ!

突然、真人様がベッドの上に乗ってきた。

ゆっくりと私の上に四つん這いになる。


「ま、真人様!」


「静かにしてぇ。駿は起きるからさぁ。だぁいじょうぶ。君のことを聞くだけ」


「なら、椅子に座ってお話しをしましょう」


「こっちのほうが話しやすいよ」


いや、全然しやすくないよ。

どういう考えでしやすいと言っているのかね?


「23番。君からいい匂いがするね。お風呂上りだからかな?とってもいい匂い。俺と同じシャンプーだ。立花と楠も俺と同じシャンプー使っているんだよぉ。知ってた?立花と楠は特別に同じお風呂の使用と許可してるんだぁ」


「……………………勝手に使用してしまい申し訳ございません」


「怒っていないから。謝らないでよぉ。23番は弟君いるんだよね?」


「はい」


「どんな子なの?」


「とても優しい子です」


「そっか。優しい子なんだね。実家は弟君が継ぐの?」


「はい」


「そっか。じゃぁ、23番は実家には戻らないよね?」


「……………………」


「実家には戻らないでこっちで結婚して暮らすってことだよね?」


「いや、あの、それは」


「えっ?実家に戻るの?弟君が実家を継ぐのに?居場所ないよねぇ?なんで戻るの?どうして?」


うるせーな。

なんだよ。

真人様かなりうるせーよ。

そんなことどうでもいいだろ!


「居場所あるの?あっちで結婚して手伝うの?こっちは何をしに来たの?」


「真人様!」


「ん?」


「もうお休みになられては?お疲れでしょうし。駿君も起きてしまいます」


「別に疲れてないよ」


「いえ、疲れてますよ。きっと疲れてます」


「んー?ごめんねぇ。そっか。23番のことか。ほら、目を閉じて」


あんたが退いてくれて部屋から出て行けば目を閉じるよ!!

だから、早く部屋から出てくれ!


「目がぱっちりだねぇ。しょうがないなぁ」


真人様がゆっくりとした動作で私の上から退いてくれた。

少し安心できると思った。

だが、その安心はほんの少しだけ。


「はぁい、いい子いい子」


はて?

私は何をされているのだろうか。

スヤスヤ寝ている駿君を起こしてしまいたい。

私に説明してほしい。


「君の香りが凄く分かる。あ~っ、いい匂いだね。俺とお揃いの匂い」


一瞬で体がカチコチに固まった。

かなり衝撃だ。

全身に鳥肌が立ったのが分かった。

近い。

近すぎる。

真人様の心臓の音が聞こえてしまう近さだ。

この人は私の彼氏じゃない。

間違ってもそんなことはない。


「あはは。凄く気分がいいな」


真人様は私の頭を優しく撫でる。

身動きが取れないとはこのことを言うのか。

真人様にがっちり抱き付かれてしまってる。

この状況から逃げるには、駿君を起こすか大声で叫ぶか……………………

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