第46話

本当にズルいぞ。

溺れちゃうでしょ。

今でも足の裏が歯がゆい感じがする。


「私も擽るぞ!」


「んぎゃっ!!あはは!やめろ!ぎゃはははっ!」


「ここはどうだ!!」


「俺だってやってやる!!」


「あっははは!」


ズッパ―――ンッ!!!


「何をしているの!?時間過ぎてるでしょ!!!!!!!」


お風呂場に入って来たのは楠だ。

裸足でこちらに近寄ってくる。

マジで入って来たよ。


「楠さん!本当に入って来るとかありえないですよ!」


「……………………23番。僕は君達の体勢がありえないと思うけどな。二人で足を上げて何をしているの?駿、23番から離れて。23番も駿から離れて」


いや、それより前を隠すタオルを下さい。

というか……………………


「んぎゃーーーっ!!」


バシャ―――ン!!

私は楠に大量のお湯を浴びせた。


「楠。お前、スケベだな!最低だぞ。若い使用人の裸をジロジロ見てるとか。最低だ!!」


「見てないから!見ていないからね!?駿しか見てないからね!?」


「そう言いながら23番のこと見てるぞ」


「駿!!いいから早く出る!」


「はいはい」


駿君は湯船から飛び出して行った。

残ったのは私と楠だけ。

楠も駿君と一緒に出ていけよ。

なぜ、お前はここにいる!?


「23番」


「早く出てくれませんか?」


体を小さくしてなんとか隠している状態だが……………………


「タオルとかで隠しながら入っているもんだと思っていたのに。23番。もう少し自覚を持ってくれないかな?君は使用人なんだよ」


「楠さん!説教はあとでもいいと思いますけど!?」


「今言いたい気分だったからさ。時間を守らない場合は罰を与えるからね。君にぴったりな罰」


「守りますから!だから、早く出て行ってください!」


「はいはい」


楠は出てくれたが、私の心はかなり荒れていた。

おかしいでしょ。

本当に入って来るとかありえないから。

少し時間を待ってからお風呂場から出ると駿君はいなかった。

着替えて部屋に戻ったのだろう。

私も着替えて駿君の部屋に戻る。

すると、そこには真人様と楠がいた。

駿君はベッドの上で捻くれている。


「やぁ、23番。駿のお世話ありがとうね」


真人様はニコリと私に微笑む。

その微笑み方が凄く怖い。


「お風呂も一緒に入ってくれたみたいだしぃ。駿も嬉しいみたいだから良かったよ」


「いえ、こんな私でもお役に立てて良かったです」


「うん。こんな23番でも役に立つねぇ」


こわっ!

やっぱり、穏やかじゃないよ。

真人様、お怒りだよ!


「23番。今日は特別にしようかなって思ったんだぁ。俺が駿と23番を寝かしつけようと思ってさ。ねっ?特別なことでしょ?」


はい?

えっ?

いや、意味分からないけど。


「くすのきぃ。お前、もう出て行っていいよぉ。あとは俺が二人を寝かせるから。お休みぃ」


「……………………分かりました。何かございましたらご連絡ください」


楠はそう言って部屋から出て行った。


「23番。早く。駿の隣に行ってくれない?」


「は、はい!」


私は大人しく駿君の隣に寝る。

駿君を挟んで真人様がいるのが救いだ。

真人様は椅子に座り駿君の頭を優しく撫でる。


「駿。明日は気を付けて行くんだよ。知らない人には気を付けてね。俺も一緒に行きたいけど無理なんだよねぇ。残念だなぁ」


「真人兄ちゃんは忙しいからな。俺、大丈夫だぞ!」


「そうだね。23番もいるからね」


「うん!お土産買ってくるからな!」


「うん。楽しみにしてるからね。それと、立花のことだけど。ごめんね。あいつは、ご主人様がだぁいすきだから。許してね」


「……………………うん」


「いい子。いい子は好きだよ。ほらっ、もう目を閉じて。早く寝ないと起きれなくなるよぉ」


「おやすみなさい」


「うん。おやすみ」


駿君は真人様の魔法に掛かったように眠ってしまった。

スヤスヤと眠る寝顔はとても可愛いが、私はそれを心から可愛いと思えない。

起きてくれ!

一人にしないでくれ!

頭を叩いてでも起こしたい気分だ。


「さて、今度は23番だねぇ。君はどうやったら寝てくれるのかぁ?」


真人様は椅子をわざわざ私のすぐ近くに持ってきて座った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る