第43話

なんだろうなぁ。

楠の顔が怖いような感じがする。

なんだろうなぁ。

とっても血管が切れそうな感じがする。

なんだろうなぁ。

すごーく威圧感がある。


「楽しんでおいでよ。アメリカなんてなかなか行けないでしょ?」


「そうですね」


「駿も考えたよ。母親に頼るとか。チケットのタイミングも」


「あの、もうよろしいでしょうか?駿君が待っているので」


「いいよ。明日は9時発だからね」


「はい」


「寝坊しないように……………………駿と寝るんだったねぇ」


「はい」


あはは。

体に穴が開きそうだ。

私は逃げるようにその場を離れ急いで駿君の部屋に戻る。

部屋に戻ると駿君が心配そうに私を見てきた。


「大丈夫か?」


「大丈夫。よし!お昼ご飯だね!食べちゃいましょう!」


「……………………うん」


突然出てきた家政婦に可愛いいとこを取られて面白くないという真人様だが、こればっかりはどうにもこうにも。


「なぁ?やっぱ、怒ったか?」


「ん?そういうことしたと思う?」


「まぁ、うん。だって、お前といると楽しいもん。真人兄ちゃんといても楽しいけど、違う楽しさなんだよなぁ。お風呂の時間もそうだ。つーか、一緒にいることが多いからお風呂も一緒に入ればいいじゃん。真人兄ちゃんは俺に合わせて入ってくれる。立花はそれも嫌みたいだし。お風呂も一緒に入って一緒に寝るってよくない?」


「駿君。それは無理だな。真人様がかわいそうだよ。それに、真人様と会う時間が減るよ」


「最近、本当に忙しいみたいなんだ。今日だって無理して俺と遊ぶ時間を作ってくれたのにさ。大学のお勉強は大変なんだろ?大丈夫だ!朝と夜は会えるし!遊園地も行けたし!」


……………………。

無理して時間を作るくらい駿君のことが可愛いのだろうなぁ。

う~ん。


「なぁ?いいだろ?一緒に入ろうよ!お前の部屋でいいから」


「使用人の部屋は駄目」


「じゃぁ、この前の大きなお風呂!」


「駿君。真人様が無理して時間をつくってくれるのは駿君が好きだからだよ。一緒に遊びたいから作るの。分かる?甘えすぎるのもダメだけど、甘えないのもダメなの。程よい甘えが大切なのさ。立花さんに話してみなよ」


「……………………分かった。話してみる」


駿君の言葉を聞いて私は安心した。

立花も話せば分かる男だと思う。

真人様のことをよく知っているし、真人様の気持ちも理解しているだろう。

相性が悪くてもなんとかなるさ。

それから、駿君は何かを考えているようで黙り込んでしまった。

お昼から戻った先生も急な変化に戸惑いを感じているが、しっかりアクセサリーを作っているから大丈夫だろうと判断したみたいだ。

夕方頃には先生も帰ってしまい、私も完成したネックレスを持って自分の部屋に戻る。

夕ご飯の準備に明日の準備だ。

パスポートを探さないとダメだなぁ。

どこにしまった?

貴重品の箱の中にしまったか?

でも、記憶にないな。

身分証明書は免許証だしさ。

パスポートなんて持ち歩かないからさ。

ゴソゴソといろんな箱の中を漁るが出てくる気配がない。

いざという時に出てこないのってよくあるよねぇ。

まぁ、まずはご飯にしよう!

冷蔵庫の中身を綺麗にしておかないとね。

頂き物もおいしく食べてあげないと。

冷蔵庫の中を開けて悪くなりそうなものを全部取り出す。

レンジでチンするだけだから簡単だよね。

温めた料理をテーブルに置けば今日の夕ご飯の出来上がり!

ハンバーグにポテトサラダにトマトスープ。

混ぜご飯に野菜の炒め物。

おいしそうだ。

ハンバーグと混ぜご飯は22番からの頂き物でポテトサラダとトマトスープと野菜炒めは2番からのだ。

食費が浮いて助かる。

作るのって面倒なんだよね。

早く食べて準備しないと夜の時間に間に合わない。

本当はよく噛んで食べたいところだが、10分くらいで全部食べ終えると急いでキャリーケースの中に服を詰め込んでいく。

3日分くらいでいいかな。

というか、そんなに服持ってないし。

服にお金をかけたくないし。

愛車にかけたいし。

そういえば、そろそろ点検だな。

予約しておかないとね。

ワイパーも交換してもらおう。

……………………。

あれ?

何してたっけ?

……………………。

あぁ、パスポートだったか。

どこにいってしまったのかなぁ?

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