第41話

「真人兄ちゃん。おはよう」


「うん。おはよー。よく眠れたみたいだね。23番と一緒に寝たからかなぁ?俺、心配してたけど大丈夫みたいで良かったよ。寂しいけどねぇ」


「うん。勉強出来た?」


「うん。できたよ。そろそろ、ご飯を食べようね」


「分かった。23番!またな」


駿君はベッドから降りて真人様と一緒に部屋から出て行った。


「23番。今の体勢はマズイと思うけど」


「楠さん」


「ん?」


「今、一瞬……………………」


「何?」


「いえ、なんでもないです」


気のせいだろうか。

部屋から出て行くとき一瞬だけ私を見ていたようにも。

それも、かなり冷たい目で。


「23番。早く準備しなさい。やることあるでしょうに」


「はい。失礼します」


立花に言われて枕と時計を持って部屋から出た。

支度を整えて駿君の部屋に戻ると楠がいた。


「駿君は?」


「まだ、だよ。ふぅ」


「お疲れのようですね」


「まぁね。いろいろあるから。駿と立花の仲の悪さとか。そこに、真人様をプラスでしょ。問題事だらけだね」


「執事は大変ですねぇ」


「あのね?忠告するね」


忠告?

えっ?

何?


「駿のことだけど。あまり甘やかさないで。見てると心配になるんだよねぇ。駿のあの様子。食事のときも23番の話するし。会話に必ず23番のことが出てくる。使用人と仲良くするのはいいことだけどさ。執着してるような感じ。真人様も面白くない感じ。そりゃあそうだよねぇ。前までは真人兄ちゃん真人兄ちゃんってくっついていたのにさ。真人様の都合が悪いと駿の奴凄く機嫌が悪くなるのに。23番がいるから前よりあっさりしてるし。立花もなんだか機嫌が悪いし」


真人様の逆鱗に触れるのは非常にマズイぞ。

一年も続かないで仕事をやめるとか、今度こそお父さんが黙っていない。


【ガチャッ】


「あっ!もう来てたんだな!」


元気よく戻ってきた駿君はとてもご機嫌だ。

何かあったのだろうか?


「楠。お前、なんでいるんだよ?真人兄ちゃんが探してたぞ」


「えっ!?大変だ!!23番、あとは頼んだよ!もうすぐ先生も来るからね!」


楠は急いで部屋から出て行った。

駿君はそんな楠は見て笑っていた。


「駿君。何か楽しいことがあったの?」


「分かるのか?お前、凄いなぁ」


「いや、もう顔に出てるからさ。タダ漏れだよ」


「マジか!?」


「マジだ」


「だってよぉ、凄く嬉しくてさ!ニシシ」


「それは良かったね」


「おぅ!お前も一緒だぞ!」


ん?

私も一緒?

何が?


「駿君。何が一緒なのかな?」


「券貰ったんだ!ペア券。お前と俺とで遊びに行くぞ!お母さんから許可もらってる!」


「はい?遊び?」


「喜べよ。今、大人気のテーマパークだぞ。なかなか手に入らないチケットだぞ!平日でも入場制限だぞ!明日から行くぞ」


なかなか、状況が理解できないぞ。

えっと、それはつまり……………………


「駿君。真人様には許可とったの?」


「許可?お母さんが真人兄ちゃんに言ったから大丈夫だ。お前、パスポート持ってるよな?アメリカだからパスポートないと行けないぞ」


「まさかの海外!!」


「ないのか?あるのか?」


「一応、あるけどさ。海外なんて修学旅行くらいだよ。英語も話せないのに」


「別に話す必要ないだろ。俺がいるし。俺のお母さんも一緒だ」


うん。

これは、厄介な事になりそうだ。

立花になんて説明しようか。


「お母さんもお前に会いたいって言ってる!」


「駿君はそのまま帰るの?」


「いいや、戻ってくるけど。お母さんも一緒にな」


家族の時間を邪魔していいのだろうか。

しかも、さっき楠に言われたばかりだ。


「明日だからな!!金は心配するなよ。お母さんが出すから」


「駿君。本当に真人様は許可したの?」


「したぞ。23番と楽しんでこいって言った。だから、大丈夫だ。安心しろ。これも仕事だからな」


本当にいいのだろうか。

これはすぐにでも確認しなければ。


【コンコン】


『駿様。アクセサリー作りの先生をお連れしました』


「やった!来た!入っていいぞ!」


家政婦の案内で部屋の中に入って来た先生は女の先生だ。

髪の毛がゆるふわ巻きスタイルでとても可愛らしい先生だ。

私より若いと思う。


「こんにちは。本日はどうぞよろしくお願いいたします」


「よろしく!俺、ブレスレット作りたい!」


「はい。お聞きしております。お母様のプレゼントですね?可愛らしいビーズをたくさん持ってきましたので」


先生はボックスを開いてたくさんのビーズを見せてくれた。

本当に凄い数だなぁ。


「そちらの方もブレスレットでよろしいでしょうか?」


「えっ?」

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