第40話

「えぇ。進みますよ。23番には感謝ですね。ですが、一緒に寝るのは少々考えてほしいですね」


「申し訳ございません。凄く怖がるので」


「お化けなどいないというのに」


「分かりませんよ。子供しか見えないものもありますからね」


「困ったものです」


ん?


「立花さん」


「はい」


「私の寝顔をばっちり見ましたよね?」


「はい」


「……………………見ないで下さい!」


「もう遅いです」


「もう、早く来ないで下さい」


「分かりました。私も暇ではないので」


なんていうことだ。

彼氏でもない人に寝顔を見られてしまうとは!


「んあーーっ。うるせーよぉ」


「あっ、駿君おはよう」


「……………………おはよう」


ん?

どうかした?

駿君はじっと私の顔を見て固まってしまった。

そして、ふにゃとした表情に変化した。

あれぇ、寝ぼけているのかい?

駿君はその表情のまま私にキツク抱き着いてきた。


「あらぁ」


「駿様!」


ヤバイ。

この子、可愛いんだけど。

その表情でこれをやられてしまうとは。

お姉さんも抱きしめたくなるよ。


「駿君。起きて」


「うーん。起きてるぅ」


「いやいや、寝ぼけてるぞ」


「起きてる。もう少しこのままでいろぉ」


……………………。

起きてたのか。

起きてる状態であの表情か。


「駿様。何をしているのですか。起きているならさっさとベッドから出て朝ご飯を食べて下さい。真人様も待ってますから」


駿君は立花を無視し、私に抱き着いたままだ。

どうしたというのか。


「駿君?どうしたの?頭痛いの?熱があるの?大丈夫?」


「どこも痛くない。ただ、お前が隣にいて安心したからだ」


「……………………可愛い」


「あ”っ!?」


「あっ、ごめん」


心の声を思わず言ってしまった。


「駿様。もう7時過ぎましたよ。23番も自分の支度がありますから」


「たちばなぁ、うるせー」


「真人様のマネはしないで下さい!そんなところばかり見てしまってはダメな大人になりますよ!」


「だって、マジでうるせーもん」


この2人ダメだね。

本当に相性が悪いね。


「駿くーん」


「何?」


「早く行かないといじわるしちゃうぞ!どやっ!!」


「ふぐっ!!」


力強く駿君を抱きしめる。

立花をあまり怒らせるなよっ!


「どうだ?ご飯行くか?」


「行く!行くから!ウグッ!」


「よし、いい子だ」


駿君を離して距離を取る。


「マジで絞めてきたぞ。朝からこんなことされるとは思ってなかった……………………俺だって!!」


「どふっ!んぎゃっ!ちょっと!そこはダメだって!あははははっ!」


「あなた達!何をしているのですか!いい加減にして下さい!」


ピンポイントで私のわき腹をくすぐってくる駿君に必死で逃げようとしたが、力が全く入らず抵抗できていない。

朝からこんなに騒いでいたら夕方まで持ちません!


「おらぁ!!」


「ちょ、ご、ごめんって!」


足の裏に移動しやがったぁぁあああ!


「駿様!23番!そんなに騒いでいたら迷惑になりますから!23番!!そんなに足を開かない!駿様の足を掴まない!駿様!いい加減にしてダイニングに行きますよ!」


「あれぇ?すごーく楽しそうだねぇ」


呑気な声が聞こえ駿君も私も動きを止めた。

1人多いぞ。


「俺も一緒に遊びたいなぁ。2人でイチャイチャして、それを立花に見せつけるなんて。そういうの俺好きだよ」


ゾッっとするようなことを言い放ったのは真人様だった。

腕組みをしてドアの前で立っていた。

その横には楠もいた。

私は冷静になり現在の状況を確認する。

えっと。

私はベッドの上にいて。

駿君は私の上にいて。

私の足を掴んでいて。

もう片方の足は駿君の足が邪魔で動かなくて。

私の手はくすぐられている足に手を伸ばしていて。

そういう感じだと駿君の顔が近くなるわけで。

近くなる……………………

っていうか、近い!!!


「「近っ!!!」」


駿君も気づいたのか距離をとる。

私も急いで距離を取った。


「あれぇ?やめちゃうの?楽しそうだったのにぃ」

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