第39話

9時になり枕と時計を持って駿君の部屋に向かう。

部屋の前に着くとドアをノックする。

すると、ドアはゆっくり開いた。

部屋の中に入ると、立花の姿はなかった。


「話はしたからな。明日も来いよ!」


「分かってますよぉ。何か言われたの?」


「……………………」


「言われたのか」


「楠にも言われた。俺、真人兄ちゃんの勉強の邪魔はしなくない。だから、少し我慢する。明日は10時に先生が来るからな」


「どこで作るの?」


「ここ。お前、アクセサリー作ったことある?」


「ないね。材料代、結構するし」


「男の遊びしかしてないんだな」


「ちゃんと女の子の遊びもしてたよ!おままごととか」


「似合わない」


「くっ!言いかえすことができない!」


「枕持ってきたんだな」


「ん?あぁ、うん。時計もね。これで、起きようと思って。執事が来る前に起きるぞ」


「頑張れ」


「何を言っているの?駿君も起きるんだよ」


「えっ!?」


「20分前とかに起きればいいだけだし」


「起こして」


「分かった。頭を叩くね」


「やめろ!俺はお客様だぞ!普通に起きろ!」


「私の普通は頭を叩くことだよ。あとは、ダイブだね。枕もとを叩くのもいいけど。どれがいい?」


「どれも嫌だ!普通に声を掛けろよ」


「それだと起きないかもしれない!弟はデコピンで起きる」


「俺は嫌だ!普通に起こせよ!」


「冗談だよ。そんなに必死にならないで」


「お前が言うと冗談に聞こえないから」


あら?そうかな。


「よし、寝るぞ。駿君、もう少しそっちに行って」


「ん」


枕を設置してベッドに乗る。


「なぁ?」


「ん?」


「お前、26だよな?」


「そうだよ」


「男いねぇの?」


「……………………それを言わないで。悲しくなる」


「いないのか。そうだろうな。残念な体だし」


「だから言うなよ!」


「なんで家政婦の仕事しようと思ったんだ?ばばあだらけじゃん」


「単純だよ。お給料がいいから」


「篠原家だから、とかじゃないのか?」


「うん。というか、篠原家を知らないからね。どんな人でどんなお仕事をしているのかも。お給料が高いだけしか考えてなかった」


「ふ~ん。夢がないな」


「駿君の夢は?」


「俺は、自動車を開発する人になりたい!」


「真人様と同じ医者じゃないの?」


「違う。グロいのは嫌だ」


「怖いのか」


「怖い」


「うん。素直でよろしい」


ふわっと駿君があくびをした。

もう限界だね。


「ほら、もう寝よう。明日は素敵なネックレスを作ろうね」


「うん」


駿君は深く潜り込み私の服をギュッと掴む。

少しびっくりしたけどそのままにした。


「おやすみ。駿君」


「うん。おやすみ」


子供の寝つきは早いもので数分後にはかわいい寝顔を見れた。

私の服をギュッと掴んでいた手は外れる。

力が抜けたのね。

これで、大丈夫だ。

もう一度駿君の寝顔を見てから私も目を瞑った。




***





【ジリリリリリ】


うるさい音に起こされ時計を止める。

ねみぃ。

まぁ、家政婦の掃除をしていたときは4時半くらいに起きていたからな。

さて、駿君を起こすかなぁ。

ベッドから起き上がり首をくるりと回す。

んーーーっ。

今日も1日がんば……………………って?

あれ?

私の横の視界に黒い物がチラチラ見えるなぁ。

気になりそっちに視線を向ける。

……………………。


「立花さん。何しているのでしょうか?」


「おはようございます」


いや、おはようございますって。

まだ20分前ですけど!

何!?

時間になるのを待っていたの?


「立花さん。どのくらいそうしてました?」


「6時頃からでしょうか。2人共、爆睡でしたよ。気持ちよさそうに。2人共くっついて」


「6時!7時に起こすのに1時間も前に!?」


「そうです」


「なぜ?」


「今日はやることがなかったのと、駿様が心配だったので」


やることがないというのは嘘だな。


「……………………昨日の件ですか」


「そうですね。本音を言ってしまったので。どうやら、何も心配しなくてよかったみたいです」


何も、はないかなぁ。


「そうですか。課題進みます?」

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