第37話

温水プールから2週間。

あれから、真人様に会うことなく駿君と楽しく遊んでいた。

サッカー、キャッチボール、バドミントン、テニスなど。

泥だけになったり汗で体がベトベトになったりと派手に遊んだ。

2番はガラスを割られることも来客にいたずらすることもないからとても嬉しそうだった。

1週間前に真人様と一緒に遊園地に行ったみたいで駿君のご機嫌は最高だ。

私も一緒に行こうと誘われたがお休みだったため理由を伝えて断った。

それに、真人様に近づきたくなかった。

それについて駿君はごねることもなくしょうがないと言ってくれた。

とてもいい子だと思う。

そして、今は駿君と一緒に池にいる金魚のエサやりだ。


「なぁ?」


「ん?」


「最近、真人兄ちゃんの様子がおかしいんだ」


「おかしい?」


「うん。ニヤニヤしてる」


「ニヤニヤ?」


「まぁ、ニヤニヤするのはいつものことなんだけどさ」


いつものことなんだ。


「なんていうか、凄いニヤニヤだ」


「凄いニヤニヤって何?」


「急にニヤニヤする。妄想?」


「……………………」


妄想って何?

どんな妄想してるの。


「駿君。真人様は大人だからね。大人にならないと分からないこともあるよ」


「それ、真人兄ちゃんからも言われた」


「聞いたの!?」


「気になったから聞いた。そしたら、子供には分からないって」


「そうなの」


「お前、分かる?」


「さぁ、分かりたくもないけど」


「すごーく気になる。教えてくれないかなぁ」


「ニヤニヤしている男の話を聞きたいの?」


「気になるから」


「……………………」


子供には分からない、か。

うん。

絶対によくないことだと思うけどな。

真人様もそう言っているから教えることはないと思うけど。


「よし!エサ完了だ。次、何やろうかなぁ。お前、何やりたい?」


「そうだねぇ。何かものづくりでもする?」


「何作るんだよ」


「うーん。私が小さいときは折り紙で手裏剣とか作ったけど」


「折り紙は嫌だ」


「あとは車かな。段ボールとかで作るの」


「貧乏」


「失礼だな!結構、頭使うんだよ」


「……………………今回は特別だぞ」


「ん?」


「ブレスレット作るぞ」


「ブレスレット?」


「ん、特別だ!お母さんにプレゼントする。誕生日近いから。いつも手作りなんだ」


「素敵だね。手作りなんていいじゃない」


「家政婦が参加していいもんじゃないんだからな!」


「ん?」


「ちゃんと先生に来てもらうから、受講料2人分だ」


「本格的!?」


そうだよね。

普通じゃなかったよ。

先生を呼んで本格的に作るとか普通じゃないから。


「立花に電話してもらおう」


「今日中は無理だと思うよ?」


「はぁ?何言ってんだよ。電話すれば来るぞ」


何?

その自信はどこからくるの?

先生も大変だね。


「お前はここで待ってろ!立花探してくる」


「いや、私も行くから。というか、この時間なら裏口にいると思う」


駿君を連れて裏口に行く。

そこには、洗濯物を取り込んでいる22番と22番を怒っている立花がいた。

ちょっと、マズイかなぁ。


「立花!アクセサリーを作る先生に電話して。今から作る」


駿君!

君はこの状況を分からないの!?


「駿様。今からですか?」


「そうだけど」


「……………………真人様に似て突然なお願いをしますね。変なところは似ていて困ります。今の時間はダメです。明日、お呼びしますから」


「えーーっ!」


「時間が掛かりますからね。朝から初めていただかないと」


「明日はダメだ!真人兄ちゃんと遊ぶことになってるから。次の日は宿題をやらないと。そろそろ、やらないと大変なことになる」


「……………………アクセサリー作りは諦めて下さい」


「それもダメだ。お母さんのプレゼントだから」


「プレゼント?駿様のお母様のお誕生日がそろそろでしたか。では、真人様の約束はなしということで。真人様も暇ではないので。大学の課題もあるし、家のお仕事もあるし。大変なのです」

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