第36話

ふむ、これで分からなくなったな。

でも、負けないぞ。

罰ゲームなんて嫌だ。

変態さんからの罰ゲームってなんか怖いじゃん。

楠の合図でスタートをする。

息をいっぱい吸って潜り宝石を探す。

うーん。

あっ、ここにあるか。

おぉ!ここにも。

あっ、あれもだ。

誰かの近くになるね。

これは早いもの勝ちだよね。

誰かの近くにある宝石を取ろうと手を伸ばす。

固い感触がしっかり感じたときだ、誰かの手と重なった。

早いもん勝ちだろ!?

そう思い誰なのか確認すると真人様だった。

宝石を持って逃げようとするががっちり手を押さえつけられ無理だ。

というか、息が無理だ!!!

ぐるじぃぃぃぃいい!


「ゴボッゴボッ」


ダメだ!

浮上しないと死ぬ!

私の異変に気付いたのは真人様は手を離してくれた。

急いで上に上がる。


「ゴホッングッゴホッ」


死にそうになりながら宝石をゲットするとか凄いよね!


「大丈夫?凄い顔だったけど。笑えたぁ」


「ゴホッ!死ぬかと思いました。では、これで」


負けるわけにはいかないのだ!


「はい!終わりだよ!取った宝石持ってきて」


終わり?

えっ?

3個しかないよ。

これ、負けたんじゃね?


「あはっ、面白い顔だねぇ。そんなにショックなの?お遊びに本気になるなんて」


いや、お前の罰ゲームが嫌だからだよ。

楠に宝石を渡すと凄くびっくりされた。

だよねぇ。

3個だもん。


「では、結果報告ね。駿は10個。真人様は5個。僕は14個。23番は3個。勝者は僕たちだね」


はぁ!

勝った!


「勝ったーーーーっ!!」


あっ、またやってしまった。

でも、嬉しい!

楠、お前凄いよ!

よくそれだけ取れた!


「ありゃ、負けちった。しょうがないなぁ。ご褒美あげるよぉ」


やった!

何が貰えるのか知らないけど。


「真人様。変なものはいらないので。貰って嬉しいものを下さいね」


「くすのきぃ、そんなこと言わないでよぉ。ちゃんといいものあげるよ。23番にもね」


あれぇ?

なんか、違和感を感じるぞ。


「なぁ?やっぱ、競争しようぜ。23番は審判!」


うん。

そうだね。

最後は思う存分泳ごうね。

3人で競争をして私が審判をすることになり、スタートの合図をする。

ほぅ、駿君速いね。

でも、やっぱり大人より遅いな。

1位は楠2位は真人様3位は駿君。

それでも、駿君は何回も競争をする。

負けず嫌いなんだねぇ。


「そろそろ終わりにしましょうか。真人様もお疲れでしょうから。また、明日。23番、明日も庭で」


楠に言われて頷く。


「更衣室に行って着替えて。服はもう準備されてると思うから」


「はい」


使っていない更衣室に入り、服を探す。

カゴの中に入っている服を見つけてそれを手に取る。


「ん?これ、私の服?」


カサッと紙が落ちたのが分かりそれを拾う。

【あなたの部屋に勝手に入ってごめんなさい。2番より】

あぁ、2番が準備したのか。

タオルまでありがとうございます。

しかも、濡れた服ようの袋まで。

助かります。

濡れた服を脱いでシャワー室に入る。

軽くシャワーを浴びてから服を着る。

濡れた髪はしょうがない。

ゴムで縛り肩にタオルをかける。

これで大丈夫だろう。

更衣室から出るとすでに3人が待っていた。

男って早いよね。


「明日は、何して遊ぶんだ?」


「駿君は何がいい?」


「あ~っ、キャッチボール」


「いいよ」


「あと、サッカー」


「うん」


「お前は何やりたい?」


「私?」


「うん」


「うーん。バドミントン」


「いいぞ。やる」


「うん。ありがとう」


「ん」


可愛いなぁ。


「会話聞いてると、なんだかくすぐったいねぇ。そう思わない?楠」


「そうですね」


「この会話があと数年後には大人の会話になるんだねぇ」


「真人様。黙っていただいていいですか?」


大人は穢れてますねぇ。

渡り廊下を歩き、屋敷の中に入る。


「私はこれで失礼します」


一礼してその場を去る。

早く離れるべきだ。

遊びの時間は終わったのだから。

後ろを振り返ることもなく部屋に戻れる廊下を黙って歩いた。

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