第34話

あっ。

サーーーッと血の気がひく。

あれ?

初っ端から私やった?

楠を見ると口元をヒクヒクさせていた。

駿君は爆笑している。

笑いごとじゃないよね。

最後に真人様を見る。

そこにはニコニコと笑う真人様がいた。

もう、嫌だ。


「23番。君、なかなかいい性格だねぇ。駿が言っていた通りだ。そのまま」


「も、申し訳ございません」


「謝る必要ないよ。駿がしたことは確かに危険だから」


「は、はい」


この人、良く分からないけどなんか怖いぞ。

優しい感じだけどそうじゃない。

今まで、会ったことのない人種だ。

なんか、ねっとりっていうか。


「楠。お前も早く入って。何やるの?」


「宝探しゲームです。宝の数増やしますね」


「懐かしい遊びだねぇ。23番は何してたの?」


「23番は審判をしてました。プールの中には入っておりません」


「ふーん」


楠が敬語で話してる!

まぁ、当たり前か。

楠は私におもちゃの宝石を持たせる。

追加ですか。

なら、派手に撒きますか。

3人が何かを話しているときに宝石をプールに撒く。


「完了しました!」


「よし!真人兄ちゃんにも楠にも負けないからな!」


「駿が俺に勝つわけないよ。楠にもね」


「23番。合図をお願い」


「では、今回は3分にします。スタート!」


3人は同時に潜る。

まさか、こんなかたちで会うことになるとはね。

昼食後ってことだったのに。

そんなに早く食べたの?

胃がおかしくなりそうだ。

2番にこのこと伝えたらどうなるのかな。

あっ、また時間すぎちゃった。


「終了でーす!こちらに持ってきてください」


3人の宝石を数える。

えっと……………………

あの……………………

なんか、見てくる!

真人様がめっちゃ見てくるけど。


「では、結果発表します!3位楠さん。2位駿君。1位真人様です。おめでとうございます」


「負けたぁ。もう1回しようよ!23番。もう1回やって」


駿君のおねだりにもう1回することになった。

ポイポイと投げ込みまた3分の時間制限。

私は、プール最サイドを歩きながら3人を見ていた。

特に駿君を。

足がつって溺れていないか、とか。

何かおかしいことはないか、とか。

ぐるっと一周してもう一周しようと歩き始めたとき、足元がぬるっとしたものを感じた。

えっ?と思った瞬間、もう遅い。


【バッシャーーーーンッ!】


「え”っ!」

「落ちた!?」

「あらぁ、見事な落ち具合だね」


服が重い。

着衣水泳訓練じゃないのに。

なぜ、私は!


「なぜ、おちたーーーーーーっ!!ごほっ」


あうっ。

鼻に水が入ったぞ。

痛い。


「大丈夫?」


「楠さん。いろんなものが嫌になりました」


「あはは。大丈夫、下着は透けてないよ。黒の服だからね」


「そこじゃないです」


足が凄くぬるってした。

何?


「おい。大丈夫かよ。盛大な落ち方だったぞ。面白かった」


「駿君。こんな状況で面白いって言わないで」


「もう、濡れてるし。そのまま遊べば?一緒に遊ぼう」


「……………………そうだね。もう、濡れてるもんね」


「元気だせよ」


真人様がいるのには、こんなに盛大に落ちるとかないよねぇ。


「ねぇ?足は大丈夫なの?ひねったりしてない?怪我は?」


「あっ、大丈夫です。ど、どこも怪我などはありません」


真人様は楠や駿君と違い怪我のことを聞いてきた。

将来、医者になるだけある。

流石だね。


「本当に?凄い落ち方したから。足首とか少し回してみて」


「大丈夫ですから」


そう言ったのに真人様は私の腰に腕を回してプールサイドに座らせる。

そして、足首をゆっくり回した。


「真人様。それは、僕がやりますから!駿と遊んであげてください」


「ダメ」


「ダメって」


どこも痛くなのになぁ。

真人様と目が合うとニコッと微笑みをされ、私もニコッと返す。


「ここ、痛くない?」


「いいえ、痛くないです」


「えーーーっ。本当に?」


「はい。どこも痛くないです」


「そっかぁ。それならいいけど。じゃぁ、一緒に遊ぼうか?あとで、立花に服を準備させるよ。そのままだと帰れないよね?更衣室はもう1つあるから、そこを使ってよ。シャワー付きだからね」


「はい」


あの、もう大丈夫なので手を離して下さい。

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