23番は篠原真人と対面する

第33話

全身から嫌な汗が溢れてくる。

私の後ろに確実にいる相手から妙な気配を放たれて、どうしていいのか分からない状況だ。

ご挨拶をしないといけない。

そう思っても体が後ろを振り向くなっというのだ。


「あっ!真人兄ちゃん!今、ご飯食べてるところ」


「そっか。まだ、だったんだね。で?この子が駿のお気に入り?」


振り向かないと。

ほらっ!

振り向け。


「23番。お仕事があるでしょう?もう行っていいよ」


楠!

あなたが助けてくれるとは!

ありがとう。

あとで野菜のプレゼントしてあげるからね。

助けが入りさっきが嘘のように体が動く。

後ろを振り向き頭を下げる。

できるだけ顔を見ないで頭を下げたまま帰ろう!


「家政婦23番です。私はこれで失礼させていただきます。どうぞごゆっくり」


「なんで、帰るの?」


「えっ?」


まさかの言葉が返ってきたぞ。

なんで、帰るの?だって?

いや、それは……………………


「駿は君のこと気に入ってるし。一緒に遊べばいいよ。2番から頼まれたんでしょ?お世話の件。みんなで遊んだほうが楽しいからさ」


「いや、その」


「頭あげていいよ。俺も着替えてこよっと。立花、準備して。更衣室にいるからぁ」


「かしこまりました」


えーーーっ。

真人様の気配がなくなるのが分かると、その場にヘナヘナと力なく座る。


「23番。しっかりしなさい。こうなったら一緒に遊びなさい」


「立花さん。楽しんでません?無視しましたよね?」


「そんなことしてません。失礼がないように。楠もカバーしてくれますから」


「そうですか。あの、こんなことになります?」


「……………………嫉妬ですかねぇ」


「えっ?」


「なんでもありません。兎に角、失礼がないように。あまり真人様に近づかないように」


「了解です!」


立花は真人様がいるであろう更衣室の中に入って行った。


「23番」


「はい」


楠が私に近づき横に座る。


「大丈夫だよ。そんな簡単にクビなんかしないから」


「クビになった人、いるんですね?」


「あーっ、うーっ、いるね」


「そうですか」


「僕からみたら君は大丈夫だよ。というか、絶対に大丈夫」


「なぜ、そう思うのでしょうか?」


「うん?それはねぇ、駿のお気に入りだからね」


そうですか。

駿君がいるから私は大丈夫なんだ。

複雑だ。


「食べた!なぁ?先にプールで遊んじゃダメ?」


「ダメ。食べたばっかでしょ。休憩してから遊んで」


「んぁ、分かった。23番!なんか、知らないけど一緒に遊べるな。頑張れよ」


まだ11歳なのに……………………

15歳も年下なのに。

心配されちゃうのね。

足に力を入れて立ち上がる。

楠も立ち上がって片付けを始めた。

私も一緒に片付ける。


「もう、食べなくていいの?」


「いらないです」


「そう」


そんな気分じゃない。

片付け終了後に真人様と立花が更衣室から出てきた。

チラッと真人様を見てみる。

やはり、まだ若い。

学生さんだから当たり前だけど。

ふわふわのダークブラウンの髪にかわいい顔立ちだ。

中性的っていうの?

女装できるかも……………………

今、変なこと考えちゃった。

あの容姿でお金持ちでしょ?

そりゃぁ、モテるよねぇ。


「楠、あとは任せました。私は屋敷に戻ります」


「了解」


「23番。くれぐれも失礼がないように」


なんだろう。

立花の顔が赤い?

さっきは気づかなかったけど。

というか、そんなに見てないし。

私は、立花に近寄り手でおでこを触る。

立花はびっくりしたのか急いで体を遠ざけた。


「何するんですか!」


「立花さん。少し熱ありません?」


「はっ?」


「顔、赤いです」


「気のせいです。風邪などひいてません」


「そうですか?少し熱かったような……………………」


「いいから、あとはよろしくお願いしますね」


立花は逃げるように出て行った。

あれ、絶対熱あるよ。


「なぁ?もういいだろ?早くプールに入ろうよ!」


「うん。いいよ」


「やった!」


駿君は、飛び込むをするようにプールに入る。

あんなことして!


「駿君。そんなことするな!危ないでしょ!首の骨とか折ったらどうするの!」

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