第30話

駿君からサッカーボールを借りて自分の足元に落とす。

右足を少しだけ上げてリフティングする。


「おぉ!凄い!楠!見ろよ!23番凄いだろ!?なぁ、凄いだろ!?」


「駿君。そんなに褒めないで。かなり恥ずかしい」


「でも凄いぞ」


「あぅ。失敗した」


前より出来なくなったが、まぁまぁな感じだね。


「俺の勝ちだ!」


「もう一回」


「俺の勝ちだもん」


「いいじゃんか。もう一回くらい」


「えーっ」


「ケチ」


「ケチじゃない!」


「ケチ!ケチ!」


「いいよ。やれよ!でも、負けたら何でも言うこと聞けよ」


「いいよ。1つだけね」


「よし!考えとこ」


負けるつもりないもん。

25でしょ?

やってやる!


「待って!僕もその勝負やるよ。僕が勝ったら僕のやりたい遊びをしよう」


「楠のやりたい遊び?それなんだ?」


「勝ったら言うからね。駿の記録を更新すればいいんでしょ」


「そうだ。んじゃ、1回だけな!」


「了解」


楠も参加するのか。

まぁ、3人で遊ぶことになってるからいいけど。

できるの?

これ、結構難しいのに。

まぁ、勝てばいいし。

サッカーボールを足元に落としてリフティングをする。

1回2回と順調にいき、これなら更新できると思った瞬間25回にサッカーボールはコロコロ落ちた。


「なんだよ、同じ回数じゃん!」


「あらぁ、同じ回数だから約束はなし!」


「分かってるよ。次、楠だぞ」


楠は転がったサッカーボールを持って足元に落とす。

すると、素晴らしい安定感でリフティングする。

あらぁ、ちゃんとボールが上に上がってる。

前にいこうとするボールを上手に修正してるし。


「な、なんだよ!楠、お前凄いじゃん!」


「はい、26回目。これで、僕の勝ちね。僕のやりたい遊びをしようね」


「いいぞ。何遊ぶんだ?」


「温水プールがあるの知ってるでしょ?今日はそこで遊ばない?」


「プールかぁ。俺、外で遊びたい」


「あれぇ?僕が勝負に勝ったのに?」


「うっ、分かったよ。プールでいいよ」


温水プールなんてあるんだね。

知らなかった。

あれ?

でも、私水着ないよ。

えっ?

私は何をすればいいの!?


「じゃぁ、行こうか。23番、行くよ」


「楠さん!私、水着ないですけど」


「ん?君は入らなくていいよ。君は宝をプールに投げる係」


はぁ?

宝探しゲームのこと?

それって、見てるだけ?

駿君だけならいいけど、この変態がいるなら入りたくないしいいか。


「23番は入らないのか?」


「駿君。私はプールサイドで見てるよ」


「残念な体だもんな」


「おい!それを言うな!」


「ぎゃはははっ!」


駿君は笑いながら屋敷の中に入っていった。


「23番。立花から聞いたけど、一緒に寝たんだね。1人で寝れるでしょうに」


「いろいろあったんです。駿君は寂しいみたいなので」


「いろいろって何?」


「いろいろです。今日の夜はどうなんですか?」


「今日は大丈夫。真人様が寝かしつける」


「そうですか。一緒には寝ないんですか?」


「えっ?」


「いえ、なんでもないです」


そこまで言うのはダメだな。

下っ端家政婦がそこまでは言えない。


「温水プールなんてあるんですね」


「あぁ、離れにあるからね。渡り廊下あるの知ってる?」


「はい」


「その先に温水プールがあるの。掃除は達美様の家政婦が担当してる」


「あぁ、だから知らなかったんですね」


「真人様もよくそこでリフレッシュするよ。真人様のために作ったものだからね」


「凄いですね」


親馬鹿が。

子供のために温水プールだと?

市民プールでも行け!


「屋敷の中から行くことになるんだけど、駿は先に行ったみたいだね。外じゃなくてプールでもいいんじゃん」


「子供はプールが好きですから」


「大人もプール好きだよ。真人様がその例だね」


「……………………」


楠に連れられプールがある場所に着いてびっくりだ。

室内ガラス張りだとか凄いから。

ヤシの木があるぞ。

マジか。


「遅いぞ!俺の水着は?」


「今出すから。着替えてこようね。23番は待ってて」


「はい」


2人が更衣室に入ると同時に、私はプールに腕を入れた。

ちょうどいい温度だね。

冷たくもなく熱くもなく。

プールなんてずっと入ってないなぁ。

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