第29話

「そうだねぇ。あぁ!畑のばかりじゃないんだよ。周りは森だからね。森の中に入って柿とかいちじくとか取ってた。その時のための木登りだね。熊に会わないように気を付けながら探すの。なかなかのスリル感!女の子の友達は怖がっていたけど、私は男の子と一緒に探検したり」


「女の遊びじゃねぇな。完全に男の遊びだぞ。そんなことやってたからこんな感じに育つのか」


「こんな感じって」


「サッカーだってそうだ。かなり上手だった」


「あーっ、あれは弟と一緒にやってたの。野球もできるよ。田舎だから、野球の人数も子供だけじゃ足りなくて。大人も混ざってた。大人も本気で遊ぶからさぁ。子供も本気で熱くなるよね」


「……………………田舎って凄いな」


「みんな優しいよ。近所のおばちゃんからスイカもらったり、おじさんからお年玉もらったりね。悪いことしたら自分の子じゃないのに叱るとか」


「ふーん」


「明日は楠さんも一緒に遊ぶって」


「楠も?」


「そう。暇だから」


「あいつ、大丈夫なのか?最後まで体力続くのか?」


「それは、遊んでみないとどうかな。そろそろ、寝ようね」


「ん。明日の朝は真人兄ちゃんにいってらっしゃいって言うんだ!約束した」


「そうなの?」


「さっき、夕ご飯食べてるときにな!あっ、お前のことも話したぞ。凄い家政婦がいるって」


「……………………ん?それは、なんて言ったのかな?」


「手加減しないとか。マジの勝負したとか。口が悪いとか」


正直すぎるぅ。

口が悪いって言葉はマズイよ。


「真人兄ちゃんも笑ってた。そんな家政婦いたんだねって」


「駿君。クビになること言わないでね」


「大丈夫だぞ。その辺も俺がしっかり伝えた」


「なんて?」


「俺が素でいろって言ったんだって。俺だけって。約束しただろ?敬語の件。だから、立花も何も言わなかったじゃん」


「そうか。まぁ、ありがとう」


「おう」


「もう寝ようね。明日のために」


「うん」


「おやすみ駿君」


「おやすみなさい」


駿君は疲れていたのかすぐに寝てしまった。

やはり、まだまだ子供だ。

こんなに可愛い寝顔で……………………

安心したような感じだ。

1人でここに残り、我慢しているのか。

真人様も学校があるもんね。

家政婦も仕事をしなければならない。

執事も忙しいし。

私でいいなら、たくさん遊んであげるよ。

1ヶ月間、飽きるくらいにね!

私は駿君の頭を軽く撫でて目を閉じた。

次の朝、頭の痛みで目が覚めた。


「起きましたか?おはようございます。23番。まさか、一緒に寝るとは思いませんでした」


「あーーーっ、おはようございます」


あれ?

私、頭叩かれた?


「起こしに来たらあなたまでいたので驚きましたよ」


「そうですか。駿君。朝ですよぉ」


「んーーーっ」


あらぁ、そんな可愛い声出さないで起きてよ。

つーか、弟に似てるぞ。


「駿君!真人様に会うって言ってたでしょ!起きないといたずらするぞ」


「起きる!!!だから、いたずらするな!」


あらっ、はっきりしてるじゃないの。


「駿様。お着替えをお願いします。23番。あなたは自分の部屋に戻って下さい。お遊びは10時からで。お庭にお連れしますから」


「はい。分かりました」


「23番!またな!」


「うん。ちゃんと朝ご飯食べてね」


「おう!」


私は自分の部屋に急いで戻った。

なんだか、立花の機嫌が悪かったような。

なんていうか、雰囲気?

まぁ、今は着替えるのは先だよね。

朝ご飯も食べて。

時間はあっという間だからね。

部屋の中に入り、身支度を先に整える。

それから食パンを焼いて朝ご飯を食べた。

午前中は軽い運動をして、午後から派手に遊ぶか。

楠のためにも最初は準備運動だな。

準備も整い裏口から庭まで行く。

庭に着くとサッカーボールでリフティングしている駿君が見えた。


「23番。遅い」


「まだ、10時じゃないからいいの。楠さん。おはようございます」


「うん。おはよー」


あれ?

なんか、元気ないね。


「楠さん。具合悪いんですか?」


「ううん!そんなことないよ!元気!」


「そうですか」


それならいいけど。

倒れないでよね。


「なぁ?リフティングできる?俺、25回できる」


「出来るよ」

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