第28話
自分の部屋に戻ると急いで準備をする。
先に洗濯機を回してご飯の準備をする。
あまり、時間がないのであっさりしたものを作り、明日の準備も素早く済ます。
40分ほどで洗濯機が止まると洗濯物をカゴの中に入れて室内干しの物干しに干していく。
洗濯物、夕ご飯、明日の準備を全部済ませる頃にはちょうど9時前になった。
よし!行くか。
鍵をしっかり締めて2番から聞いた部屋に向かう。
お客様でもあるのに裏側に近い部屋なんだねぇ。
隠すような部屋に位置だな。
桜のプレートのドアの前で立ち止まりノックをするために腕をあげた。
『いいですか?駿様。彼女はお仕事もありますから。ずっとは無理ですからね』
あれ?
誰かいる?
『真人様の代わりにいつも楠と遊んでいたじゃないですか。彼なら駿様のやりたいことを熟知してますよ。23番は新人で楠みたいに気が利くタイプじゃないです』
『うるせーよ。俺は23番がいいの』
『困りましたねぇ』
この声は立花か。
気が利くタイプじゃない?
はっ!ごめんなさいね!
【コンコン】
「こんばんは。駿君。お休みの時間ですよぉ」
『あっ!来た!』
部屋の中からバタバタと足音が聞こえ、目の前のドアが勢いよく開いた。
「こんばんは」
「2分遅刻だぞ」
「ごめんね。でも、ちゃんと来たぞ」
部屋の中に入るとやはり立花がいた。
「立花さん。お疲れ様です」
「お疲れ様。楠から話は聞きました」
「そうですか。2番から1ヶ月間、駿君のお世話をしなさいと命令を受けました」
「2番が!?」
「はい。まぁ、この通りですからね。また、窓ガラスを割られてしまわないように」
駿君をチラッと見ると嬉しそうにベッドの上に飛び乗っていた。
「マジか!?じゃぁ、この1ヶ月は23番がずっと遊んでくれるのか?」
「うん」
「やった!これで、暇じゃなくなるな」
駿君は嬉しそうにベッドの上で飛び跳ねる。
立花はなんだか難しい顔をしていた。
「立花さん?」
「立花!お前、もういいから出てけよ!もう寝る。真人兄ちゃんに言っておけよ。今度の休みは遊園地に行こうって」
「……………………分かりました。では、おやすみなさい」
立花は難しい顔のまま出て行った。
……………………。
やはり、あまりよろしくはないのか。
でもなぁ、2番の感じだと本当に助かったみたいな表情だったし。
楠がやりたいことを熟知していたとしても、私みたいに遊ぶことができるのか?
いやぁ、無理だろうな。
上品さも何もない私だから、あれができるわけで。
「なぁ?何か話してよ!」
「ん?うーん。何がいいかなぁ」
「お前の小さいときの話が聞きたい!」
「いいよ。話す前に寝る!」
「ん」
うん、いい子だね。
「お前も寝てよ。俺が起きたときにいなかったら怒るぞ」
「真人様のときはどうなのさ」
「真人兄ちゃんと楠はいいの!お前はダメ!」
「怖いのか?ん?」
「グッ」
図星か。
まぁ、こんなに広い部屋で1人だもんね。
寂しいのか。
「よし、一緒に寝てあげる」
「ん」
私は駿君の隣に寝ることにした。
「話して」
「うん。まず、私の実家はすごーく田舎なの。熊も猪も出る。バス停も電車も凄く遠いから車がないといけない場所なの。そんな場所だから遊ぶことも限られててさ。近所の子と木登りしたり、川で遊んだり虫もいっぱいいたから虫とりしたり」
「野生児?」
「いや、違うから。でも、都会の子の遊びじゃなかったね。まぁ、活発な子だったかも。足も速かった」
「確かに速い!俺の周りであんなに速いやついないな」
「競争とかよくしてたよ。あとは、実家の手伝いとか」
「実家の手伝い?」
「農家なの。米とか野菜とか」
「米植えるの?」
「そうだよ。うちの米は凄くおいしいって評判なんだ」
「俺の家でも少しだけ野菜作ってるぞ。でも、小さいんだ」
「家庭菜園だね」
「そう。家政婦がやってる」
「新鮮なものを食べられるのは凄いことだよ。とてもおいしいでしょ」
「うん。おいしい。お前はいつも新鮮なもの食べてたんだな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます