第26話

「いいじゃん。俺がやめろって言ってるんだし。楠も敬語じゃないぞ」


「いや、楠さんは別です」


「えーーっ、遊んでいるときは完全に素だったのにか?もう、お前には無理だぞ。ボロボロだぞ」


「なんか廃れた女みたいで嫌な言い方です」


「普通にしゃべれよぉ。楽しくなくなるぞ。お前の部屋に押し掛けるぞ」


「……………………分かった!ただし、2人のときだけね。先輩家政婦になんて言われるか」


「あぁ、なら伝えておく!友達だからって」


「友達?」


「そう。友達だ!」


若い友達だなぁ。

まぁいいか。

一応、遊ぶ仕事は果たしたし。


「なぁ?これできる?水てっぽう!手でやるの」


「できるよ。ほらっ!!」


「ぶはっ!顔にかかった」


「これは、顔にかける技だよ」


「いや、それだけじゃないと思う」


「ほらっ!」


「またやったな!」


懐かしいな。

この遊び。

大雅にやったら泣いたっけ。

難しいみたいで出来なくて。

可愛かったなぁ。

この子といると昔のことを思い出すな。

風呂でも遊び風呂から出る頃には5時をすぎていた。

髪をしっかり乾かし整える。


「完成だね。ほらっ!すっきりだよ」


「俺のかわいい顔がよみがえったな」


「そうだねぇ」


「なんだよ。何か言いたそうだな」


「何も」


「ふーん。もう、真人兄ちゃん帰ってくるか?」


「うん。そろそろだと思うよ」


「そっか!早く会いたいなぁ」


「本当に好きだね」


「真人兄ちゃんみたいになりたいんだ!頭凄くいいし。英語もペラペラだぞ!」


「駿様もペラペラでしょ」


「そうでもない。発音が難しい。まだ2年だし」


「前は日本にいたの?」


「うん。いた。こっちにも戻ってくるのは5年くらいだって」


「16歳くらいか。高校生だね」


「俺、真人兄ちゃんと同じ学校に行きたい!」


「頑張ればいけるよ」


「うん!真人兄ちゃんも同じこと言ってた。あと立花と楠も」


「さて、2番が待ってると思うから出るか。自分で部屋まで行ける?」


「お前は来ないのか?」


「うん。そこまでは無理かな。まだ新人だからね」


「ふーん。俺の部屋ここから近いぞ」


「1階なの?」


「うん」


「2階じゃないの?」


「いつも1階」


「へーぇ。そうなんだ。1人で寝てるのか」


「うん。俺が寝るまで真人兄ちゃんが隣にいてくれる。楠のときもあるけどな!立花はないけど。あいついじわるだ」


「おぉ!駿様もそう思うのか」


「……………………なぁ?様付もやめろよ」


「えーっ、でもねぇ」


「や・め・ろ!」


「なら、駿君は?」


「それならいいぞ」


駿様……………………駿君はとてもにこやかに笑う。

廊下に出るとびっくりするぐらいの笑顔でいる楠が立っていた。

なぜに?


「やぁ、23番。駿ととても仲良くなったみたいでよかったよ。でもねぇ、一緒にお風呂に入るまでは許してないなぁ」


……………………。

あれ?

なんだか、様子がおかしいような。


「楠!今日、初めてだな!」


「駿。よく遊んでもらった?」


「うん!たくさん遊んだ!明日も遊ぶぞ!」


「明日は僕と遊ぼう」


「嫌だ。こいつと遊ぶ。こいつ、凄いんだ!サッカー凄く上手なんだ!スライディングするんだぞ!」


駿君はキラキラした目で楠を見ていた。

私、褒められた?

いやぁ、こんな子供に褒められるとは。

かなり嬉しい。

素直な気持ちだからかな?


「駿。23番は家政婦だよ?掃除の仕事もある。だから、ずっとは無理なんだ」


「なら、俺も23番と一緒に掃除する!いいだろ?」


「そうきたか」


そんなこと言うとはね。


「楠。いいだろ?ダメっていうならいたずらするぞ」


「それはダメ!この屋敷が悲惨なことになる。前も大変なことになったし。しょうがないなぁ」


「やった!!」


「駿、伝えなきゃいけないことがあるんだ。今日の夜は真人様が

来られないから」


「夜?ダメなのか?」


「そう。どうしてもしなければならないことがあるって。だから、僕が行くね」


「なら、23番がいい」


「……………………」

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