第25話

一旦、自分の部屋に戻り着替えを取りに行く。

着替えを手に持って戻れば、まだ泥だらけの姿のままだ。

どんだけ怖いんだよ!

一歩も動いてないよね?


「駿様。なんで、そんなに怖いんですか?」


「べ、別に怖くない!」


「あっ、そうですか。では私は」

「お化けがいるからだ!!!」


ふむ。

可愛いな。


「お化け?」


「初めてこの屋敷に来たとき1人で入ったんだ。そしたら、ギシギシ音が聞こえた。変な声みたいなもんも。誰もいないのに。怖いだろ?電気が消えたんだ!!」


なるほど。

トラウマか。

マジで怖がっているな。


「分かりました。ほらっ、入りますよ。服を脱いで下さい。バンザーイ」


「そんな小さな子供じゃないぞ!もう11歳だ!!」


「でも、お化けを怖がるお年頃です」


「そ、それは別もんだ!うーーっ」


いやぁ、本当に可愛いな。


「早く脱いで下さいね。早く洗濯しないと」


「分かってる!」


駿様はスポーンスポーンと服を脱ぎ捨てタオルをきちんと腰に巻く。


「早く脱げよ。風邪ひくだろ」


「ちょっと待ってくださいよ。やることあるので。先に入って下さい」


「無理だ!怖いもん」


グハッ!

素直になってる!

そんなに怖いんだね!

なんて可愛い子だ。


「分かりました。これはあとでします」


私も服を脱ぎ捨ててタオルで体を隠す。

すると、それを見ていた駿様はなぜか複雑な表情をした。


「何か?」


「残念な体だなって」


「……………………」


「俺のお母さんでもそこまでペタンコじゃないぞ」


「駿様。いいことを教えましょう。これから先、女の子の体を見る機会があると思います。その時、私みたいな体だとしても絶対にそのようなこと言わないこと。いいですね?」


「分かった。言わない」


「うん。いい返事です」


「早く入るぞ!体がじゃりじゃりだ」


「そうですね。私もです」


タオルを巻く意味がないって言われたような感じだよ。

子供は素直でよろしい。

駿様を洗い場に座らせて頭から洗う。


「お前、上手だな」


「そうですか?」


「ん。真人兄ちゃんより上手だ!」


「ありがとうございます」


「なんで上手なんだ?」


「うーん。多分、弟のお世話をしていたからだと思います」


「弟いるのか?」


「はい。もう大人ですけど。駿様みたいにお風呂を怖がる子でした。浴槽から手が出てくるってよく騒いでました」


「ふーん。仲良しだなぁ。俺は兄弟いないから」


「そうなんですか」


「だから、真人兄ちゃんといると嬉しい。お兄ちゃんみたいで。いっぱい遊んでくれる!。俺の親、いつも忙しいから。今日も1人でこっちきた」


「1人?えっ?駿様は1人で日本に?」


「保護者の奴も一緒に来たけどすぐアメリカに帰っていったぞ。いつものことだけど」


「それは寂しいですね」


「そんなこと言えないけどな。でも、お父さんもお母さんも俺のこと大好きだって言ってくれてる。誕生日にはちゃんと会社を休んでお祝いしてくれるんだ」


なんだ、ちゃんとした家庭か。

心配しちゃったよ。


「かゆいところはないですか?」


「ない」


「では、流しちゃいますね。耳を押さえて下さい」


「うん」


シャワーで優しく泡を流していく。

うん。

こんな感じかな。


「次は体ですね。前は自分で洗えますね?」


「洗える」


「では背中を洗います」


若いっていいよねぇ。

つるつるだ。


「お前の背中も俺がやってやるからな!」


「ありがとうございます」


本当はとても優しい子だ。

生意気だけど。

体の洗いっこが終わると湯船に入る。

まさか、自分たちが掃除している風呂に入る日がくるとはね。

22番に自慢しちゃおうかなぁ。


「ここの風呂本当にデカいな!泳げる!」


「駿様。泳いではいけません」


「お前だって足バタバタさせてる!」


「これは、運動です」


「そんなことしてもお前の体は残念のままだぞ」


「おい。ガキ、それ以上言うなよ」


「あっ、素だ。お前、敬語やめろよ。俺と話すときは敬語なしでいいぞ。違和感ある!」


「そう言われても」

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