第24話

11歳という年齢なら1人で入れるでしょうに。

何?

風呂にはお化けがいるから1人じゃ入れない!とか?

大雅もそんなことあったな。

実家の風呂は古いから雰囲気あったし。

『姉ちゃん。お化けいる?いる?』

『いないよ。大丈夫だからおいで』

『ホント?』

『大丈夫だから』

懐かしいな。

あれって、何歳の頃だっけ?

小学生だったのは確かだな。

この子と同じくらいだったか?


「こっちのお風呂は入りにくい!いつも真人兄ちゃんと入ってる。お風呂でも遊べ!長く息を止める競争しようぜ!」


1人で入ったことないのかよ!

まだ、遊ぶのか!


「23番……………………駿様をお風呂に。わ、私はこ、この廊下を掃除し……………ますから」


2番、大丈夫?

もう歳なんだからあんなに走ってはダメでしょうに。


「分かりました。そう致します」


「本日は、1階の……………………お風呂で」


「はい。2番。もう大丈夫ですので。息を整えて下さい。駿様、行きましょうか」


「おう!」


駿様は場所を把握してるのか前を歩く。

普通は逆なのだが、前を歩きたがるからしょうがない。


「23番。俺の服は?」


「持っていきますよ。なので、先にお風呂にお入り下さい」


「ん!すぐに来いよ!!」


「はい」


「絶対だぞ!」


「はい」


「本当か?」


「本当です」


「逃げないか?」


「逃げません」


「逃げたら立花に言うからな!」


「だから、逃げないって言ってるじゃん!!」


「あっ、素だ。んじゃ、先に入ってる」


パタパタと駆けて行く駿様を私は呆れ気味で見ていた。

信用しろよ。

駿様の服を準備しないとね。

先輩家政婦を探して、着替えを頼もう。

駿様の部屋知らないし。


「23番!あぁ、良かった。これが駿様の着替えになります」


あら、2番だ。

息は整ったんだね


「はい、ありがとうございます」


「はぁ、もうびっくりです」


「申し訳ございません」


「いいのです。しっかり綺麗に洗って下さいね。それと、あなたまで一緒に入らなくていいですから。一応、そういう興味も持ち始める年頃ですので」


「あーっ、そうですね」


そうか。

11歳って微妙な年頃だったか。

まぁ、一緒に入ろうとは思ってなかったが。


「本当は立花さんや楠さんにお願いしたいですが、2人共忙しいので」


「大丈夫です。任せて下さい」


「ではよろしくお願いします」


私は着替えを持って風呂がある部屋に入った。

すると、目の前にはまだ泥だらけ姿の駿様が立っていた。


「遅い!」


「いや、なぜ入ってないんですか?」


「ここのお風呂は初めてだ!脱いだ服はどこに置けばいい?タオルがない!」


「なるほど。初めてでしたか。タオルはここに。服はこちらに」


「ん。着替えは?」


「これです」


「お前のは?」


「私のはありませんよ。さぁ!その汚い服をさっさと脱いでお風呂に入って下さい。背中洗ってさしあげますから」


「……………………お前も入るぞ!一緒に入らないならこのままいる」


「体を洗うために一緒にお風呂に入りますよ」


「湯船に入らないだろ!?それに、お前も汚い」


「……………………駿様。まさか、1人で入るのが怖い?」


「う”っ」


あれ、この反応は……………………

図星だったか。

大雅と同じように怖いのか。

大雅も湯船に1人で入るのが嫌いだったな。

下から手が出てきて引っ張る!とか言って。

2番、多分この子はまだそういう興味などないぞ。

そっちよりお化けが優先だ。


「入ろうよ!なっ?」


「しょうがないですねぇ。私の着替えも持ってきます」


「ホントか?」


「はい」


「嘘じゃないよな?」


「はい」


「嘘だったら立花に言うからな」


「ちゃんと来ますよ」


「よし!約束だぞ!他の奴が来たら絶対に入らないからな!俺、お前がいい!楽しいから好きだ」


「楽しいですか?」


「楽しい!凄くな!サッカーまたやろうな!」


「……………………そうですね。またやりましょうね」


「おう!」


嬉しいこと言ってくれるではないか。

かわいい子だ。

生意気なガキだと思ったが。

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