第23話

生意気なガキが……………………


「子供と一緒に遊ぶこともできねぇ役立たずの家政婦なんかと。真人兄ちゃんもなんでこんな奴ら雇っているんだ?サッカーもキャッチボールもできねぇし。競争しても足が遅くて勝負にならねぇし。というかばばあで無理だし。楠も立花も忙しそうだし。お前、もういいや。俺はその辺散歩して時間潰すから」


……………………。

おい、私は無能と言いたいのか?

こんな子供に?

15歳も年下の子供に?

私は大人だぞ。

こんな子供に馬鹿にされてさ。

他の家政婦もこんな扱いされてさ。

ニコニコ笑顔で『はい。分かりました』なんて言えるか?

はっ!!

馬鹿が。

いいだろう。

家政婦の凄さを見せつけてやる!


「駿様。サッカーはお好きですか?」


「好きだけど」


「では、サッカーをいたしましょう。2番からボールを預かってますので」


「出来るのか?サッカー」


「できますよ。見事、シュートしてみせます」


「……………………」


さぁ、楽しい遊びの時間です。

うふふっ。

ボールを持ってきて広い場所に移動する。

ゴール場所も設置して準備は完璧だ。

大雅と一緒にサッカーをしてたんだ。

こんなガキに負けてたまるか!

サッカーを地面に置いてガキと睨みあう。


「23番。後悔して遅いからな!絶対、シュートなんてできないからな!」


「そんなことないですよ。私、運動好きですから」


笛の音なんてない。

合図もないのに私とガキは同時に動き出したのだった。

こんなガキに負けられない!

家政婦の代表としてこの勝負に勝つんだ!

家政婦だってやればできるんだ!

家政婦だってサッカーくらいできる!

家政婦だって子供と遊べる!

家政婦だって、家政婦だって、家政婦だって!!

ちゃんと心があるんだよーーーーっ!!!!!!!!


「家政婦をなめるなーーーーっ!おらぁぁあああ」


「……………………」


私の蹴ったボールはあっという間にガキの後ろに転がり、手加減なしの本気モードで猛ダッシュ。

ボール上手に蹴りながら邪魔されることもなくシュート。


「家政婦さいこーーーーっ!イエス!!はっ!」


「……………………」


力強くガッツポーズを決める。


「どうですか!駿様!家政婦だってサッカーくらいできますよ!!」


「……………………」


「実家の遊びは木登りやかけっこ!体を動かすことがメイン!弟とサッカーや近所の子供と野球もやった。そんな生活をしていた私が金持ちも坊ちゃんに負けるわけない!あっはっはっはっ!」


「おい。23番。お前、忘れてないか?俺はお客様だぞ。家政婦のお前がなんでそんなに態度がデカい」


「……………………申し訳ございません」


忘れてた。

怒りが爆発してしまい、完全に仕事モードではない私を出してしまった。


「俺は心が広いからな!態度がデカいのは別にいい。ただ、家政婦に負けるとか嫌だ。もう一回勝負しろ!」


「分かりました」


「敬語なしだ。お前、素のほうがいい。勝負だぞ。手加減なしだ」


「そうですか。では、全力で勝負しましょう」


「敬語はなしだ!!学習しろよ!馬鹿だな」


「馬鹿じゃねぇよ」


「おぉ、それだよ!それ!」


こんなガキに敬語なんか使ってやるかよ。

それに、今は近くに先輩家政婦もいないし。

全力で遊んでやる!

駿様と全力で遊ぶこと数時間。

4時となり屋敷の中に入る時間だ。

だが、ここから恐れる事態が発生。


「これはどういうことですか!?2人とも泥だらけ!!どんな遊びをすればこんなことになるのですか!もう!23番、あなた私の朝の話をしっかり聞いてましたか?あぁ、駿様。早くお風呂にお入り下さい。そのような恰好では怒られてしまいます」


「うるせーよ。ばばあ!」


「あぁ!駿様!そのようなお姿で屋敷の中を走り回らないで下さい!!」


駿様は元気良く廊下を走り回り、2番はそんな駿様を追いかける。

あ~ぁ、砂とか廊下にたくさん。

これ、掃除するのか。

私だよね?

その前に、私の今の姿もなんとかしないと。


「ばばあ!無理するなよ。倒れるぞ」


「駿様が止まってくださればよいのです!」


「嫌だ」


うーん。

駿様を風呂に入れないとダメか。


「駿様。お風呂に入りましょう。早く入らないと真人様が帰って来ちゃいますよ。砂や泥を落として綺麗な姿で真人様と遊びましょう」


「おう!入るぞ!真人兄ちゃんに会うには綺麗にしなきゃな!」


「その通りです」


「お前も一緒に入れよ。俺の体を洗え」


「駿様。11歳ですよね?」

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