23番は坊ちゃまの相手をする

第18話

2ヶ月なんてあっという間だ。

この2ヶ月は非常に忙しかった。

家政婦の寮が取り壊しになるため、急いで休憩所を作ったり。

荷物整理の手伝いを任されたり。

新しい寮のアンケートを書いたり。

お父さんに電話して無言のまま切られたり。

やはり、会って話さないとダメだ。

あの頑固親父め。

無言はないでしょう。


「23番!これも運んでちょうだい!」


「はい!」


2番よ、もっと整理してくれ。

古株さんなのは分かっていたが……………………

他の古株さんもだよ!!


「23番!こっちもお願いよ」


「分かりました!」


「こっちもお願いね」


「はい!」


下っ端は大変だ。

真人様組と達美様組のどちらも手伝わないといけないのだから。

自宅から通っている人はいつも通り掃除をして、住込みの人は引っ越しをするということになっているが……………………

私の引っ越しはいつだ?

先輩家政婦の引っ越しばかりで、自分の引っ越しが出来ていない。

ドタバタとあっちへこっちへ走り回り、ちょっとカビ臭いがする布団や壊れかけのラジオなどいろんな物を運び出す。

初めて達美様の屋敷に入って迷子気味になったり、真人様の屋敷で掃除中の家政婦とぶつかりそうになったり目が回りそうだ。

若いからっていろんな物を押し付けないでほしい。


「凄い汗だねぇ。大変そうだね」


ニコニコ顔でこちらに近寄ってきたのは楠だった。

こっちは汗まみれで運んでいるのに、この男は汗なんて無縁な表情で!!

嫌な奴だな。

何をしに来たんだ。


「そんなに住込み人数いないのに、なんでそんなに大変そうなの?」


「楠さん。それ、本気で言ってます?」


「本気」


「ふーぅ。いいですか?住込みのほとんどの人がベテランさんです。あの建物に何年住んでいたと思います?1年2年じゃないですよ。荷物もそれなりに多くなります」


「あぁ、そういうことか。荷物の整理命令だしたのに」


「物を大事にする方々なのです」


「ふーん。今日中に終わる?」


「終わらせますよ。明日の仕事のためにも」


「その考えは偉いね」


「楠さんは何をしに?」


「ん?君が凄い速さで走っていたから。立花が見苦しいから注意してきなさいって」


「……………………」


あ”っ!?

見苦しいだと?

あの野郎、この状況を見せてやりてぇ!!

9時に開始して昼も食べないで頑張っているのに!

どういうこっちゃ!


「楠さん」


「何?」


「お暇ですか?」


「うーん。真人様が帰ってくるまでは時間があるよ」


「手伝ってもらえません?」


「……………………あぁ!忘れてた!立花から頼まれていたことあったんだ!」


そう言って楠は屋敷の中に戻っていった。

逃げられたか。

まぁ、逃げると思っていたけどさ。

さて、続きをするか。

本を持って達美様組の部屋に小走りで向かう。

見苦しいと言われても走り回らないと終わらないのだ。

存分に走ってやる。

達美様の屋敷に入って指定された部屋に運ぶ。


「23番。その本は本棚にいれてくれるかしら」


「はい」


いや、本くらい自分でいれてよ。

こんなことしてたら終わらないよ!

各部屋でこんなことしてるから進まないのだ。


「疲れたわねぇ。明日の仕事が辛いわ」


「そうですね」


今日の働き一番は絶対に私だな。

汗かいて服が気持ち悪いよ。

早く風呂に入りてぇ。

本の収納が終わると次の運びに走って移動する。

今日は何カロリー消費できたかな?

なかなかだと思うけど。


「23番!今度はこれをお願いね」


「はい!」


また布団かよ!

うーっ、カビ臭いよぉ。

干してますか?

無駄に大量なんだよな。

使ってないでしょ、これ。

カビ臭い布団を運び終えると、また家政婦の住まいまで猛ダッシュ。

中学生から高校生まで陸上だったんだよね。

綺麗なフォームだと思うんだ!


「23番!爆走しない!!!」


「ヒッ!!」


出た!立花だ!!


「あなた、さっきから見苦しいですよ!もっと、おとしやかに」


「立花さん。今はそんな状況ではないですよ。まだ、半分も終わってないので」


「なぜ、そんなに進んでないのですか」


「荷物も量だと思いますが。ほとんどがベテラン家政婦ですので」


「整理をして下さいとお願いしたのに。その状況なら夜までかかりますね」

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