第17話
2番の部屋の前まで来ると軽くノックする。
すると、中からどうぞという声が聞こえた。
それを、聞きドアを開けて中に入った。
「こんばんは!」
「こんばんは。今日はビーフシチューなの。おすそ分けあるから持っていきなさい」
「ありがとうございます!」
テーブルにはかぼちゃサラダ、コンソメスープ、ご飯、ビーフシチューが並べていた。
おいしそう。
あぁ、幸せだ!
「どうぞ。お食べ」
「いただきます!!」
「はい。元気がよろしい」
「はぅ、おいしいですぅ。お料理上手が羨ましい」
「あなたも、そのうち作れるようになるわ。しっかり自炊すればね。今日のお昼は何を食べたの?」
「うどんです。玉ねぎと人参があったのでかき揚げにしました」
「あら、おいしそうね」
「かき揚げが少し焦げましたけど」
「失敗するのは大切なこと」
「はい!」
「お仕事慣れた?私が見た限りでは大丈夫そうだけど。ただ、真人様の忘れ物の件が気になるわね。いろいろ、ポケットの中に入れてしまうから」
「そうですね。学生カードとかピンセット、高級時計、ピアス、ネックレス、指輪、なんでもありです。22番は避妊具を見つけたとか」
「……………………やはり、なかなか難しいですね。真人様のその癖を直そうとしましたが失敗ばかりです。私から何度もお伝えしてもダメ。立花さんと楠さんもダメでした」
直そうとしたんですね。
初めて知りました。
あと、最初の頃と比べると酷くなってますよ。
1つだけだったのに複数になってる。
「大変ですね」
「大変なのはあなた達よ。仕事の進行に遅れが生じるからね。それを、真人様がしっかり分かっていれば。余計な仕事が増えて」
「あはは……………」
「なんとかならないかしらねぇ」
「そうですね」
「お医者様になるのに、あれで大丈夫かしら」
「楠さんが名医になるって言ってましたよ」
「そうね。優秀なのは確かです。でも、この癖は直したほうがいいです。何か考えましょう。あなた達のためにも」
「ありがとうございます」
「他に困ったことある?」
「大丈夫です」
「そう。それならいいの。なら、こちらから大事なお知らせね。私もさっき聞いたばかりなの。この家政婦の寮だけど……………………取り壊しになるから」
「えっ?」
取り壊し?
それは、えっと、あの。
「取り壊し!!!」
「そうよね。そうなるわよね。私も同じ反応だったわ。さっき、達美様からお聞きしました。理由は老朽化です。でも、大丈夫よ。新しい家政婦寮ができるまで屋敷のお部屋を借りることになってるから」
「老朽化ですか?」
あっ!
昨日は立花と楠の会話だ。
あーっ、そういうことか。
「ここもかなり古いですからね。耐震性も不安なので。予算もあるから。今度は追い炊き機能付きよ。ネットも完備!」
「おぉ!それは、ありがたいですね」
「達美様の屋敷にも真人様の屋敷にも使用人専用の部屋はあるのよ。だから、達美様担当は達美様の屋敷に。真人様担当は真人様の屋敷に。分かった?」
「それは、いつ頃でしょうか?」
「2ヶ月後。荷物の整理をお願いね。大きな家具類は業者の人に頼みます」
「そうですか。分かりました。整理しておきます」
「お願いね。ちなみに、部屋は1階の奥。裏口近くよ。家政婦と執事の部屋は階が違うからね」
「分かりました」
屋敷に仮住まいになるのか……………………
やだなぁ。
いつまでだろう。
かなり時間かかるよねぇ。
「23番。何か悩み事があるなら言ってね。なんでも聞くわ。執事の愚痴でもいいから」
「えっ!」
「いろいろ話してちょうだい」
「……………………」
「心配なのよ。一番若いから。ここは年上ばかり。同年代の女性もいないし」
「ありがとうございます。何かあればご相談させていただきます」
「えぇ。どうぞ」
2番は優しく私に微笑みかけた。
この人、母親みたいだ。
その日、部屋に戻ったのは10時頃。
それまでずっと2番と話をしていた。
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