第15話

「んじゃ、お邪魔しまーす」


「えっ!?ちょっと、楠さん!なんで、部屋の中に入るのでしょうか!必要ないですよね?」


「あっ、この間来たときより綺麗だ。掃除した?」


「ジロジロ見ないで下さい!」


立花!お前は何をしているのだ!

って、修理してる!!

助手はどうした!?


「なぁ!タオルねぇんだけ……………………ど、えっ、誰?」


たーいーがぁ。

なんつー姿で登場するのぉ。


「大雅!いつもいつもそんな恰好で!タオルは洗濯機の上に置いてあるでしょ」


「あぁ、あれね。洗濯するものかと思った」


「早く風呂場に戻れ!」


「なんだよ。久しぶりだからサービスしてやろうと思ったのに」


「そんなのしなくていい!!早く戻って着替えろ!」


「はいはい。早く着替えるよ。そっちの男も気になるし」


そう言って大雅は風呂場に戻った。

私は黙って楠を見る。

楠は冷めた目で私を見ていた。

立花も見ると同じように冷めた目で見ていた。

何?その目は……………………

勘違いしてないよね?


「23番。君は悪い子だね。男を連れ込むなんて。しかも、破廉恥男を」


「楠さん。違いますから」


「あれは誰?どこの人?家族以外の人を勝手に連れ込むのはダメだよ。全裸で君の前に現れるとかさ。変態だよ。久しぶりのサービスって何?ん?」


変態なのはお前だよ。

私の弟を変態と言うなよ。

あれは私の前しかしないはずだから大丈夫だ。


「楠。彼女にそんなことを聞いてはいけません。修理が終わりました。これでもう大丈夫です」


「立花さん、ありがとうございました」


「いいえ。では、23番。さっきの変態はどのような方でしょうか?篠原家の敷地にあんな男を入れてはいけませんよ」


お前もかよ!

変態、変態うるさいな!


【バンッ!】


どわっ!なんの音?

後ろを見ると大雅が鬼の形相で立っていた。

あれ?

テーブルが斜めだぞ。

蹴ったな!


「おや、登場ですか?」


「全裸男のご登場だね!全裸は無理だけど上半身裸で僕はいつも寝てるよ」


あんたのことなんてどうでもいいから。

私の弟をそんな言い方しないで!

つーか、ベッドの上に座るな!


「姉ちゃん。こいつら何?」


「執事。執事服着てるでしょ」


「へーぇ。これが執事か。失礼な執事だな。一人変なのいたよ」


「大雅。都会にはいろんな人がいるの。分かった?」


「分かった」


「立花さん。楠さん。これは、私の弟の大雅です。家族なので泊めても問題ないですよね?」


私の言葉に立花は驚きの表情をした。

楠はマジマジと大雅を見ていた。


「これは大変失礼しました。弟さんでしたか。びっくりです。家族でしたら問題ございません。私は篠原真人様の執事をしております立花と申します」


「松村大雅です。姉がいつもお世話になってます。こちらこそ、見苦しいところを申し訳ございません」


おぉ!

大雅、ちゃんと挨拶できるようになったのね!

姉ちゃん嬉しいよ。


「へーぇ。弟君か。なんだ、びっくりしちゃった。大胆なことするね。でも、お姉さんだからってあれはダメだよ。年頃なんだから。せめて、前は隠してほしいな」


うっ、正論だ。

確かに、その通りです。

でも、いくら言っても直さないからさ。

実家もあんなに田舎だし。

田舎だとあれくらいへっちゃらなんだよね。

見る人いないもん。

お隣の家も離れているし。

みんな、ご年配だし。


「どうもすみませんでした」


大雅。

なんて、いい子なの。

ちゃんと謝るなんて。

でも、直そうと思ってないよね。


「体がっしりしてたね。何かやってるの?」


「仕事の所為だと思います。いつも米とか野菜とか重いものを持つので」


「そっか。実家が農業なんだっけ。じゃぁ、弟君が跡を継ぐの?」


「はい。姉はこっちで頑張ってますから。俺は実家を守ります」


凄い!

この変態とちゃんと会話してる。

大雅、あんた凄いよ!


「偉いね。しっかりしてる。23番もお手伝いするの?」


「へっ?あぁ、そうですね。実家に帰ったときに」


「ふーん。小さいときは?」


「それは、毎日のように手伝いましたよ。農業は家族総出ですから」


「だから、足腰がしっかりしてるわけだ。大事だよね。家政婦の仕事は腰に負担が多いから」


「そ、そうですね」


もう、帰っていただいてもよろしいですか?

ほらっ、立花が帰り支度してるよ!

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