第14話

金額が高すぎるな。

あのお父さんが許してくれるかぁ?

いや、無理だろ。

でも、話だけでもしてみるか。

大雅も本気みたいだし。

私に言うくらいだもんね。

大雅はお店を出てもなんだか難しい顔をしていた。

コンビニでビールを何本か買って部屋に着く頃には4時過ぎになっていた。

部屋に着いても難しい顔をやめない大雅に私はため息をしてしまう。


「大雅。もう少しランク下の車じゃダメなの?」


「やだ」


「どうしてもほしいのか」


「おう」


「おう、じゃねぇよ。もういいや。夕ご飯手伝えよ。煮物はあるけど何か作らないとダメだからね。味噌汁くらいはできるでしょ?米は私がやるから」


「ん、頑張る」


「よし」


は~~ぁ。

さて、先に風呂に入ってもらうか。


「大雅。明日は何時に帰るの?」


「朝。ご飯は食べるからな!作れよ」


「はいはい」


「土産って駅しかない?」


「そうだね」


「姉ちゃん買って」


「自分で買え」


土産くらい買えよなぁ。

風呂の掃除してからスイッチ入れないとダメか。

米もセットしないとね。

掃除の達人になりそうだ。

カビの落とし方とか凄い腕前だと思う。

風呂の掃除を片付けてスイッチを入れる。

次にキッチンに向かい米を洗い炊飯器にセットする。

ここまでは順調だ。

時計を見ると5時半過ぎだ。

大雅は私のベッドに寝そべってスマホを操作していた。


「大雅。あんた、彼女いるの?」


「んーっ、いない」


「フラれたの?」


「……………………」


「おい。お前は何人フラれるの。」


「12人」


「はぅ!12人!?そんなに付き合ってたの?」


「姉ちゃんはゼロじゃん」


「それを言うな!最近のガキはなんだよ。中学生で恋人とかいるし」


「俺、中学2年でいた。高校1年で経験済み」


「そんなの自慢にもならねぇよ。平凡なのになんでできるのさ」


「性格?俺、性格がいいらしい」


「私は悪いのかよ」


「姉ちゃんは女って感じじゃないからな。言葉だって荒いし。もっと上品に話せば?姉ちゃんみたいな女と付き合いたくないって思う」


この野郎。

図星で何も言えない!!


「酒飲んでいい?」


「ダメ!風呂が先!すぐに沸くから。それからにしてよ」


「えーっ、ケチ」


「風呂が先!」


酒を最初に飲んだら絶対に風呂に入らないでしょう。

清潔にしてもらいたい。


「姉ちゃん。今度の連休に実家に帰ったら農業手伝いだな。収穫の。朝から大変だぞ」


「分かってるよ。久々にやるさ」


「腰が痛くなるぞ。俺、つい最近腰やった」


「マジで?若いのに」


「うるせー」


「あはは!」


お盆休みで実家に帰るのはいいけど、たくさん手伝うことになるからいつもこっちに戻ってくるとき体中痛いんだよね。

休むために行っているのに疲れるとどうなのさ。

まぁ、ご飯や風呂の準備はしなくていいけどさ。

世間話的な話していると風呂の完了の音が鳴った。


「大雅。風呂に入って来て」


「はーい」


小さい子供のようにバタバタと風呂場に向かう大雅を見て私は少し心の中で笑う。

母親のような気分だなぁ。

さて、私は少しだけ部屋の掃除でもしますか。

テーブル周りとベッド周りを掃除して大雅の荷物をベッドの横に置く。

ラグをコロコロで埃を取り除き、軽く除菌のスプレーをかける。

明日は天気がいいし、シーツ類も洗濯しちゃおうかな。

乾かしている間に買い物も済ませて……………………


【コンコン】


ん?

ノックの音が聞こえたような……………………


【コンコン】


あっ、やっぱり。

時計をみると7時に近い。

修理かな?


『23番いないのですか?』


あっ、立花の声だ。

急いでドアを開けると立花と楠が立っていた。


「いるじゃないですか。早く開けて下さい。鈍間ですか?」

「ほらっ!いるでしょ!」


おい。

なんで、楠もいるのだ。

そして、修理屋はどこ?

立花の手にはなぜ道具箱?


「立花さん。まさか、立花さんが直すのでしょうか?」


「はい。このくらい直せますよ」


「そうですか。楠さんは?」


「僕は助手だよ」


「そうですか」


執事ってなんでもやるの?

修理もしちゃうの?

経費削減?

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