第12話

元気でよろしい。

ワンコみたいだねぇ。

柴犬みたいな感じだ。


「あっ!さっき、家政婦さんに会ったよ」


「挨拶した?」


「した。今日泊まるってこと伝えたらいつでもどうぞって言われた」


「へーぇ。順番違うよね?」


「姉ちゃんの許しはあまり必要ないから」


おーい。

ここに住んでるのは私だからさ。

重要でしょう。


「あと、妙にキラキラした人に会った」


「キラキラ?」


「うーん」


「あんたどこから来たの?裏口にちゃんと止めた?」


「おう。キラキラも裏口にいた。高級な車から降りて挨拶されたから俺も挨拶したけど。その人の後ろには何人かスーツ姿の人がいた」


誰?

お客様?

でも、お客様が裏口使う?

初めてだなぁ。


「スーツ姿の人達凄く怖かったぞ」


「危ない人だったりして」


「あれは、ボディーガードだなぁ」


「じゃぁ、有名人だね」


「そういうのここならいっぱい来るだろ」


「私は見たことないから。裏口で仕事してるし。表側の仕事はしてないの」


「下っ端だね」


「うん。でも、肉が食べられる給料はいただいてます!」


「大トロは?」


「それは無理だね。肉は安いやつ」


「今日行くところも?」


「安いね」


「だよねぇ」


残念そうな顔しないでくれない?

安くてもおいしいから別にいいでしょ?

サラダバーとソフトドリンクバー付だよ。


「姉ちゃん。そのまま出かけるつもり?」


「まさか、ちゃんと着替えるよ」


何を着て行こうかなぁ。

久々にプリーツスカートにしようかなぁ。

髪型も下すか。

箪笥からシャツとプリーツスカートを取る。


「おぉ!スカート穿くの?」


「何?ダメ?」


「いや、見ないから」


「そうでしょうね。そんなに着ないから」


「ミニ?」


「それはない。ひざ下だ!」


「なんで?若いんだし生足出せば?もったいない」


「大根の足を出してどうするの」


「そうだな。どんまいな体だったな。胸もないし。つーか、俺たち親に似てないよね」


「それを言うな!悲しくなる」


部屋着からお出かけスタイルにして髪を下す。

ヘアーアイロンでストレートにして脇の髪を耳に掛ける。

お出かけの準備が終わるとちょうど洗濯機が止まった。


「姉ちゃん。本当に胸ないな」


「な、何してる!姉のブラを摘まむな!」


「手伝ってやろうとしたのに。あっ!ブラとパンツ別なのか。姉ちゃん。揃えないとダメじゃん。女子力ないな」


「余計なお世話だ!」


全く、中学生のときからこんなことして。

彼女とかにもこんなことしてないよね?

心配だ。

洗濯物を干し終える頃には2時を過ぎていた。

車で行くしかないか。

歩くと30分くらいだし。


「大雅。行くぞ」


「おう!歩き?」


「車」


「姉ちゃんの?」


「うん。あんたこの辺知らないでしょ」


「知らん」


家政婦の住まいから出て裏口に向かう。

裏口の駐車場に着くと私の愛車が止まっていた。

私の愛車は今日もかっこいい。

ホワイト色のSUV!

あぁ、そのお姿とても凛々しい。


「姉ちゃん。早く車のドア開けて」


「私の愛車の邪魔をするな」


「車じゃなくて人間の男をつくれ」


「あーっもう!分かったよ」


ドアノブを触っただけで鍵が開くとか便利だよねぇ。

大雅は嬉しそうに助手席に乗る。


「姉ちゃんとお出かけ楽しいな」


「そうですか。私も大雅とお出かけ楽しいな」


はい、お前は絶対奢り目的だろ。

分かっているんだからな。


「姉ちゃん!出発!」


「へーい」


エンジンを掛けて後ろを確認しながらバックをし車道に入る。


「姉ちゃん。今日の夕ご飯は遅く食べよう」


「はいはい。そのつもりですから」


ん?う~ん。

前方から見覚えがある車が走ってくる。

あれって篠原家のミニバン?

運転をしているには立花だ。

車と車がすれ違うときに一瞬目が合ったような気もしたが……………………

誰か、助手席に座っていたようないなかったような。

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