第11話

「うん。全部やろうとしたの?」


「はい」


「無理でしょ。この広さを一人はキツイよ」


「ですよね!」


「もう終わりなよ」


「そうさせていただきます」


「明日の休みは」

「この前もお伝えしましたがプライベートのことは無理です!!」


「フラれちゃった」


「では、私はこれで失礼します」


「本当にかわいい子」


おふっ!また言われた。

気持ち悪いんだよ。

あまりの気持ち悪さに急いでその場を離れた。

使った掃除道具を片付けてまっすぐ休憩所に向かう。

休憩所には何人か家政婦がいたが22番はすでに帰ってしまったようだ。

お皿を返そうと思うけど、どちらも今日は休みみたいだし。

ロッカーの前に置いておくか。

自分の部屋に一度戻ってお皿とお礼として実家から貰った野菜をいくつか袋に入れる。

また、私におすそ分けをしてください!

休憩所に戻りおすそ分けに期待して10番と9番のロッカーの前に置く。


「23番」


「はい」


私に声を掛けてきたのは2番だった。


「明日はお休みよね?」


「はい」


「夜はお暇?」


「暇です」


「なら、夕ご飯食べにいらっしゃい」


「はい!ありがとうございます!!」


やった!

夕ご飯の心配しなくていい!


「鍵の件はどうなったの?」


「立花さんが今夜修理をすると言ってました」


「そう。今夜なの」


「はい」


ん?なんだか2番の表情が難しいような顔を……………………


「23番。明日の夜はいつもの時間で」


「はい」


えーーーっ。

なんだか、何かを言いたいけど言えないみたいな感じでしたけど。

何?あれ。

って!早くしないと1時になるよ!

急いで自室に戻り制服を脱ぐ。

部屋着に着替えて洗濯機をセットする。

さて、干している洗濯物を取り込んでしまわないと。

ベランダに出て洗濯物をカゴの中に入れていく。

全部取り込むと一枚一枚折り畳み箪笥の中に入れていく。

制服は綺麗にアイロンをしてハンガーに掛ける。

お腹空いたなぁ。

1時に来るならお昼食べてないよねぇ?

何か作るか。

可愛い弟のためだ。

久しぶりにパスタでも作る?

あーっ、でもパスタがないね。

だから買い出しをしなければならないのに。

カップラーメンなら大量にあるから、カップラーメンでもいいかな?

でも、いつもこんなの食べているのかって思われたくないよねぇ。

面倒だなぁ。

この際だから外に食べにいく?


【コンコン】


『ねーちゃん!遊びに来たよぉ』


えっ?もう来たの?

時計を見ると15分前だ。


「はいはーい。今開ける」


ウキウキ気分でドアを開ける。

ドアを開けると米を持った若い男が立っていた。

キャラメルブラウンの短髪はワックスでツンツンスタイル。

いつも米や重い物を持っている所為かしっかりとした体。

そして顔は平凡。

姉と弟どちらも平凡っていいよね。

なんだか落ち着く。


「入って。米ありがと」


「ん!精米してるから」


「マジで!嬉しい!」


米櫃の中に貰った米を入れる。

これで米の心配はないね。


「大雅。お昼食べた?」


「食べてねぇよ。何か作ってくれるの?それか奢ってくれるの?」


「食べに行く?」


「行く!」


「よし、姉ちゃんが奢ってやるよ」


「よっしゃっ!」


「その前に洗濯してからね」


「はいはい。待ってる。あと、今日泊めて」


「はぁ?なんでよ」


「とーめーてー」


まぁ、家族なら大丈夫って言われているけどさ。


「布団ないけどいいの?」


「いいよ。姉ちゃんと一緒に寝る」


「おい。狭いだろ」


「姉ちゃんのベッドはシングルじゃないから大丈夫だ!それにしても、テレビもないしソファーもない。大きな家具ってベッドだけじゃん。引っ越しの時と同じだな。増えてない」


「うるさい!」


「怒るなよ。俺、肉食べたい!」


「姉ちゃんも食べたいな。駅前に大きなステーキを提供するお店あるの。そこに行く?」


「行く!!絶対に行く!肉!」

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