第9話

実家にいたときは畑の手伝いしてたっけなぁ。

あの頃が凄く懐かしい。

実家から出て6年。

はーーぁ。

もう6年も経ってしまった。

都会に憧れて来たけどゴミゴミしたところが嫌だと気付いたのはつい最近のこと。

弟は実家を継ぐらしく頑張って農業を学んでいるのに、私はやりたいことがまだ見つらず……………………

姉ちゃんは未だに自分の人生に迷ってます。

弟に会うのはいつぶりだろう?

2ヶ月ぶりかな?

姉ちゃん、今日のお仕事頑張るからね。

それに明日は休みだ!!

おっと、いけない。

もう5時だ。

戸締りを確認していつものように必要な物をポケットに入れて部屋から出た。

休憩所には10人の家政婦がいた。

今日はいつもより多いな。


「おはようございます。連絡事項を伝えます。達美様邸の屋敷では本日食事会を行います。お客様が5人いらっしゃいますので挨拶をしっかりお願いします。真人様邸の屋敷では本日午後から真人様のお友達がいらっしゃいます。なので客室の掃除をお願いします。以上です」


お友達ねぇ。

まぁ、私は客室じゃなくて水回りだけどね。

ゾロゾロと家政婦が自分の担当の屋敷に向かうのを見て私も歩き出す。


「23番!おはよう」


「22番。おはようございます」


「今日も洗濯お願いね。私は昨日のリベンジする」


「頑張ってください」


リベンジってどこだ?

風呂か?風呂なのか?

風呂掃除を言われたのか?

洗濯場に着くと大量の洗濯物にため息をつく。

今度は何が入っているかなぁ。

ポケットの中に手をつっこみ一つ一つ確認する。

ん?なんだ?この袋?

って、これは薬?

あっ、こっちはカプセルだ。

ピンセットも出てきた。

おいおい。注射器とか出てこないよね?

って!また高級腕時計!!

しかもこの服なんか血?みたいなの付いてる。

大丈夫なの?

医学生なのは分かったけどさぁ。

かなり不安だよね。

大事な物をこんなふうにポケットの中に入れておくとか大丈夫かよって思う。

ゴミも入ってるし。

ゴミはゴミ箱に入れてよね。

全部の服を確認するだけで疲れるよ。

ポイポイと洗濯機に入れてセットする。

よし、終わるを待つ間に他のことを片付けよう。

40分で1階と2階のトイレ掃除を終わらせて……………………

洗濯物を干す!!完璧じゃない?

まずはブラシ……………………


「23番!ちょっとこっちに来て!!」


「はーい」


風呂場のほうが声が聞こえたが、22番の声だったよね?

風呂場に着くとドアの前に22番が立っていた。


「どうかしました?」


「23番。虫とか平気?」


「虫ですか?まぁ、だいたい大丈夫ですけど」


「じゃぁ、ゴキブリとか平気?」


「……………………いたんですか?」


「大きいのがね、私の横をサーッと通り過ぎたの。私、あれはダメなの」


「私が退治します。その代りトイレ掃除と洗濯お願いしてもいいですか?風呂掃除と洗面所は私がしますから」


「本当に!?男前!」


「女ですけど」


「ごめーん。あとはお願いね!」


はいはい!頑張りますよ。

風呂場のドアを開けて素早く中に入る。

どこだ……………………

掃除しながら探す?

それがいいよね。

まずが全体を磨いて見つけたら踏み潰す!!

よし、この作戦でやろう。

ブラシと洗剤を持って床をゴシゴシと磨く。

木でできてる浴槽とか凄いんだけどさ、よく乾燥させないといけないから掃除とか面倒なんだけど。

ユニットバスでいいじゃん!

洗い場もなんで5つもあるのよ!

こんな広い風呂いらねぇよ!


「贅沢野郎が」


「誰が贅沢野郎ですか?」


……………………。

ガバッと後ろを振り向くと立花がニコニコと笑顔で立っていた。

その笑顔がキツイこと言う顔だぞ。

私には分かる。


「23番。もう一度聞きましょうか。誰が贅沢野郎ですか?23番」


「私の家のお風呂が五右衛門風呂なんです!だから、私の家は贅沢だなってことです!!」


「そうなんですね。あなたの実家の話でしたか。五右衛門風呂なんて凄いじゃないですか」


「そうですよね!?」


「23番。いつまでお風呂の掃除をしているのですか?あなたも22番と同じように動きが遅いですねぇ。困りましたね。これではいつまでも新人さんですね。あなたは若いから期待していたのですが、これでは話にならないですね」

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