第7話

「それはないです」


「あぁ。そうなの?」


「楠さん。道が違います」


「こっちで合ってるよ。道を覚えてもらわないと。おつかいに行けないでしょ」


「そんなに急に覚えられませんよ」


「そんなことないよ。あっ!ここが真人様が通っている大学だよ。大きいでしょう」


「そうですね。とても立派な大学です」


「でしょ!真人様は凄い人だよ。頭も凄くいいし。将来は名医になると思うよ。真人様は本当に素晴らしいよ」


「そうなんですね」


「うん。23番はまだ会ってないよね。そのうち会えるから。楽しみにしてて」


いや、会いたくないのでこのままの距離でお願いします。

遠くからあの人が真人様なんだぁって感じでいいです。

顔もハッキリ分かりませんがそれでいいです。

あっ、朝の学生カードの写真を見ればよかったのか。

そこまで頭が回らなかった。


「モテるからラブレターの数が凄いの。学校に行くと必ず貰ってくるからね」


「凄いですね」


ラブレターなんて貰ったことないよ。

ハートマークとか書いてあるのかな?

昔、友人のラブレターを見たことあるけど凄く可愛い文字で書かれていたっけ。

あれ、どうなったのかな?


「でも、真人様はそのラブレターを捨てちゃうんだよね。読まないで。しつこい女の子にはラブレターを返すとか。モテる男は大変だよね」


「そうですね」


「ねぇ?ちゃんと聞いてる?」


「聞いてますよ」


「なら、僕がどんな話をしているのか言ってみて」


「ラブレターを捨てて、しつこい人にはラブレターを返す。モテる男は大変ってことですね」


「聞いてるんだ」


聞いてるよ。

聞いてない感じでも聞いてるから。


「ここの信号を右に曲がると篠原家の裏口に出るからね。分かった?」


無駄な話をしてるからあんまり頭に入ってないよ。

もう自分で探そう。

駐車場に着くと楠にお礼を行って仕事場に戻った。

仕事場に戻ると22番が凄い速さで洗面所の掃除をしている姿が見えた。

わぁ、必死だ。


「22番。戻りました」


「あ”っ!?」


「き、機嫌が悪い感じですか?」


「23番!」


「はい!」


「洗濯物が乾いてるか見てきて!」


「はい!」


怖いぞ。

立花に何か言われたのかな?

いつものかわいい顔でキツイことを言われたのかな?

あの男何を言ったのよ。

周りのことも考えて言ってよねぇ。

22番は怒ると怖いんだぞ。

22番をこれ以上怒らせないようにしなきゃ。

洗濯場に着くと乾いているのか確認する。

今日は天気がいいからサラッとした感じで乾いている。

これならもう大丈夫だな。

一枚一枚丁寧に洗濯物をとりこみ綺麗に畳む。

シーツはシーツがある納戸にしまって、真人様の服はいつも通りに真人様の専用洋服部屋に置いておく。

あとは、執事がしまう。

洗濯物が終わると、洗濯場の掃除だ。

こまかーいとこまで綺麗に磨いて床もピカピカに磨く。

洗剤はまだあるし在庫も大丈夫。

よし!ここは大丈夫だね。

あとは廊下の窓を拭いて終わりかな。

今日は12時で上がりだし。

お昼は何を食べようかなぁ。

10番から貰ったグラタンもあるし、9番から貰ったポテトサラダもあるし。

久しぶりに肉料理もいいなぁ。

頭の中はお昼ご飯で体は窓拭きに全力。

窓拭きが終わると12時過ぎで家政婦の休憩所に戻ると、すでに22番が帰り支度をしていた。


「お疲れ様でーす」


「お疲れ様。さっきはごめんなさいね」


「別にいいですよ。何かあったんですか?」


「まぁ、いつものこと。立花さんからキツイ一言を言われただけ」


「あはは。そうだと思いました」


「あなたは行動が遅いです。もっとテキパキできませんか?だって。私より年下なのに!!あの男」


「うわぁ、なかなかですね」


「23番も気を付けてね。年下にあんなこと言われると凄くむかつくのよね!」


「そうですねぇ」


「じゃぁ、お疲れ様」


「はい」


22番は少々怒りながら出て行った。

心にグサッとくることを言われるからな。

辛いよねぇ。

さて、お昼ご飯にするか。

お昼ご飯を食べるため少しウキウキ気分で自分の部屋に戻る。

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