第6話

こいつマジでダメだ!!立花、お前ちゃんと見てろよ!

それでも管理職なのか!執事だけでなく管理もしてるなら、この男の管理もしてくれ。

うぅ、この男は自分の股間を見てますけど。

何?なんで見てるの!!


「失礼します。お持ちしました」


天の助け!

襖を開けて入ってきたのは先ほどのおばあちゃんだ。


「こちらになりますね」


「あぁ、ありがとうございます。確認してもよろしいでしょうか?」


「どうぞ」


楠ってすぐに切り替えるよねぇ。

その速さは凄いと思うけどさ……………………

楠は和紙を開いて着物を確認する。

わぁ、凄く綺麗なダークブルー。

キラキラしてる。

いくらだろう?

きっと凄く高いんだろうな。

私の給料何か月分?


「確認しました。また、よろしくお願いしますね」


「こちらこそ。あの、そちらのお嬢さんは?」


「あぁ!そうでした。新しく入った家政婦です。23番になります。ときどき、23番にもおつかいを頼みますのでよろしくお願いします」


「おつかいですか?そ、そうですか。23番さん。よろしくお願いしますね。あぁ!そうだわ。あなた、いい時に来ましたね。楠さん!少しだけお借りしてもいいかしら?」


「はぁ、いいですけど」


「ありがとうございます。23番さん、こっちに来て下さる?」


おばあちゃんは手招きして私を廊下に連れ出す。


「あ、あの、どうかなさいましたか?」


「いいものよ」


「……………………」


おばあちゃんの後を着いていくと箪笥がたくさんある部屋に通された。


「23番さん。あなた、いつから篠原様の家で働いてるの?」


「えっ?4ヶ月前からですけど」


「じゃぁ、新人さんなのね」


「はい」


おばあちゃんは私を下から上までじっくり見ると、何かを呟いて箪笥の中から一枚の着物を取り出した。


「これ、あなたにあげるわ」


「はい!?」


「実は、この着物を捨てようと思っていたの。どう?柄もうるさくないし色もクリーム色でかわいいでしょ?」


「頂けません!こんな高級品」


「そんなに高級じゃないわ。もし、あなたがいらないなら捨てるけど」


捨てる!?なんてもったいないのだ。

あぅううううううう。

欲しい。貰えるものは欲しい!

でも、落ち着け!これをもらっても帯がないぞ。

そして、こんなところのお店から貰ったら大変なことになりそうだ。

ご飯なら喜んで貰うけど。


「申し訳ございません。このようなことはきつく言われておりますので」


「あらぁ、そうなの?他の家政婦さんはいつも貰ってくれるのよ」


何?先輩家政婦は貰っているの?

はぁぁぁああああああ。

でも、でも、我慢だぞ。

こんなの貰えないよ。


「大変申し訳ございません。頂けません」


「そう。分かったわ。戻りましょうか」


は~ぁ。

私は心を落ち着かせながら楠がいる部屋に戻った。

あぁ、後ろにいるおばあちゃんの視線が怖いよ。


「楠さん。では、また今度。23番さん。またね。お待ちしております」


あぅ、なんだか申し訳ございません。

こんな私にまたねって言わないで。

複雑な感じになるから。

呉服屋から出て車に乗り込むと同時に楠が話し出した。


「23番。何してたの?」


「捨てる着物があるからあげるって言われただけですよ。頂けませんって言いましたから。貰ってませんよ」


「そっか。柴田さんは捨てるものくれるって有名だからね」


「有名なんですね。見た感じ凄く高級品でした」


「ふーん」


「あの、楠さん。帰り道こっちじゃないですよね?遠回りしてません?」


「……………………ねぇ?23番。君の判断は正しいよ。あそこの着物は貰っちゃダメ。大変よく出来ました」


「子供扱いですか?」


「そんなことないよ。僕も26歳だからね。君と同じだ」


「26歳!本当ですか?」


「嘘なんて言わないよ。僕は君が26歳ってことに驚いたけどね。履歴書には26歳って書いているのに見た目は20歳。お酒飲むときに年齢確認とかされない?」

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