第4話

目の前の男はニコニコと私を見る。


「じゃぁ、行こうか!車で10分くらいだから」


「……………………はい」


落ち着けよ!これは、仕事だ!ミッションコンプリートするぞ!

裏口から出ると従業員専用の車があり、そこには私の愛車も駐車させてもらっている。

社用車はミニバンの白い車だから私でも運転可能だ。


「助手席に座って。ちゃんと道を覚えてもらわないとね。こっちにきてまだ知らない道あるでしょ?」


そうですねぇ。

この町に来てまだ5ヶ月だ。

家政婦の仕事は4ヶ月なのにこの男の変態に気づいてしまったよ。

みんな、気づいてないみたいだけど。

いや、気づいてるけど口には出さないのかな。

私も口には出していない。


「まず、これから行く呉服屋は真人様の着物を取りにいく。大通りから細い道に入るからね」


「はい」


車は駐車場から出て車道を走り出す。

この屋敷は高級住宅街のど真ん中にある。

だから、近所の家もかなりの大きさでとても立派だ。

近所には有名は大物女優や大物俳優に政治家など。


「ねぇ、23番。今度の休みは部屋にいる?」


「プライベートのことは教えることが出来ません」


「酷いなぁ。可愛いカフェに連れて行こうと思ったのに」


「可愛いカフェは苦手なので」


「へ~ぇ。そうなの?女の子ってそういうの好きでしょ?」


女の子っていう年齢ではないからね。

これでも26歳ですから。

20代後半ですから!

あっという間に30代になってしまう。


「あっ!そういえば、23番の部屋の鍵の件だけど立花に伝えておいたから」


「ありがとうございます」


「それと、何か不便なことない?君は他の家政婦と違って若いからね。ネットも繋いでないし。あっ、いっそのこと僕の部屋に来る?ネットあるよ」


「ネットがなくても暮らせます」


必要なら友人の家で借りるから。

お前の部屋なんかに行かないよ。

というか、あんたの部屋は屋敷の中じゃん。

屋敷の中で住むのは嫌だ。

一日中仕事しているみたいな感覚になるから嫌だ。

いや、お前が嫌だ!なんで同室!?


「えーーーっ。僕は無理だよ。ネットがないと動画も見れないし。つまらない」


「そうですか」


「もし、ネットが使いたい場合は僕の部屋に来てもいいよ。パソコン貸してあげる。大丈夫だよ。無理矢理ベッドに押し倒したりしないから」


「……………………」


ヤバイよ。

普通はそんなこと言わないから!

変態だよ!この人は異常者だよ!

なんで、こんな奴が執事してるの!?

立花も真人様もおかしいよ!やめさせろよ!

セクハラ行為反対!!


「えっと。このコンビニの信号を右に曲がると大通りだからね。あとは信号6つ目を左に曲がるの」


「はい」


ここにコンビニあったんだ。

知らなかった。

いつも利用しているコンビニよりこっちのほうが近いな。

あっ!ここに私の好きなファッション店がある!

あそこには好きなドーナツのお店だ。

これなら歩いて行けるじゃん。


「目がキョロキョロしてるね。そんなに楽しいの?可愛い子」


ぞわわわわっ!と、鳥肌が!!

可愛い子って何!?そんな言葉使う奴本当にいるんだね。

ヤバイって。新鮮は空気がーーーっ!


「この町って俳優さんの家が多いからさ。俳優さん目当てに若い女の子が遊びにくるの。だから、お店も多いんだよ」


そんなことより、まだ目的地に着かないの!?

この男といつまで密室な車に乗っているの!?


「23番も俳優さんに会いたい?アイドルのほうがいい?時々、真人様のお友達が屋敷に来るからその時会えるよ。俳優さんが。あーーっ、でも23番はまだ無理かなぁ。もう少し慣れてからね。僕にも」


ドヒーーーッ!!

僕にもって何!?なんですか!?

慣れたくねぇよ!慣れたら終わりだよ!


「この時計屋の信号を左ね。もう少し先から細い道になるから」


早く着いてぇ!!


「23番は22番と仲良しだよね。なんで?」


えっ?22番?


「同じ新人さんだからだと思います」


「ふ~ん。年齢も離れているからさ。どんな話をするのかなって思ったの。いつも楽しそうに話してるから。どんな話をするの?」

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