第3話
「執事の楠さんとね」
んっ!楠!?2番よ、それはあんまりだよ。
せめて、立花にしてくれよ。
かわいい顔してキツイ言葉を言う立花で我慢するからさ!
「御用達の呉服屋で着物を取りに行ってもらいたいの。時間になったら楠さんが迎えに来るから。あなたも道を覚えないと。お願いね」
いや、ちょっと待って!まってーーーーーーぇ。
スタスタと2番は屋敷の中に入って行った。
私はその場で呆然。
なんで楠と行かせるのだ。
一番若い家政婦がかわいくないのか!
こんな思いなんて2番には伝わっていないだろう。
道を覚えるのは賛成だけどさ。
立花のほうがいいと思うのに。
的確に教えてくれるし。
「おーい。23番。お仕事するぞ。今は3人しか家政婦いないんだから早く動く!!お昼の家政婦さんに怒られるよ。お仕事残してダメよって」
「うっ。22番!私の代わりに行って下さい!」
「えっ?どこに?」
背後には私がなかなか来ないから迎えにきたのか22番がいた。
「2番からおつかいを頼まれました」
「へ~ぇ。行けばいいじゃん」
「嫌です。楠さんが一緒です」
「あら、良かったわね。あんな爽やか王子様と一緒に行けるなんて。幸せじゃない」
あれが、王子だと!?どこの部分が!?見た目ですか?
あのニヤニヤした表情が嫌だ。
何を考えているのかよく分からないのだ。
執事の仕事をしているから優秀なのは分かるけどだ。
頭のネジが何本も錆びてるよ。
「そんなこと言うなら代わって下さい」
「そうねぇ。残念だけど私も立花さんに頼まれたお仕事があるから無理ね。あっ、今日は23番は洗濯だからね!ほら、行くよ」
ズルズルと腕を引っ張られ水回りに移動させられる。
大量の洗濯物を洗濯機の中に入れていく。
なんでいつもこんなに大量に出るのよ。
洗濯物の中には真人様の服もあるわけで……………………
おーい。学生カードつけっぱなしだぞぉ。
医学生の証明書をこんなとこにつけっぱにするなよ。
しかも、ボールペンをポケットの中に入れたままだ。
この前はメガネが入っていた。
その前は高級腕時計。
なんなの?
だらしない人なの?
いつもこれを立花に渡しているという手間を考えてほしい!
まぁ、無理な話だろうけど。
さっさと洗濯物や他の仕事を片付けるとあっという間に約束の10時になってしまった。
そして、もの凄く逃げたい!今ならまだ来ていないから間に合うかな。
「は~~~~~ぁ。辛い」
「大きな溜息ですねぇ。何が辛いのでしょうか?23番」
「23番。10時だよ。さぁ、行こうか!」
げっ!まさかの立花と楠のダブルだと!
おいおい、勘弁してよ。
ダブルはキツイぞ。
「23番。22番はどこですか?」
せめて立花さんと一緒がいいです!
ビシッとスーツを着こなしかわいい顔しているのにキツイ言葉を吐き捨てる立花さんがいいです!
最近、ツーブロックの髪型にしましたね。
とても似合ってますよ。
あとその艶々した黒髪が羨ましいです!
「22番はお風呂の掃除です。あと、今回は学生カードとペンでした」
「学生カードですか。全く、あの人はこんな大事なものを!ありがとうございます。23番は楠と一緒におつかいですよね?しっかり道を覚えて下さいね。楠も、ちゃんと教えて下さい」
多分無理でしょうね。
この男がちゃんと教えることできないよ。
最初は爽やか系のイケメンさんだと思ったけど、自己紹介のときに【君って処女?】の言葉に変態だと確定した。
顔がとても素晴らしいのになんてもったいない!
あと、立花さんみたいに真っ黒な髪色にしろよ。
そのパーマ風のギリギリセーフなブラウンをなんとかしろよ。
服装だけしっかりしても中身と頭がダメなんだよ!
頭の中で楠の悪口を考えているといつの間にか立花がいなくなって楠だけがその場に残っていた。
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