第2話

──こんな所、人生で来るとは思わなかった。

大きい面会室の窓には小さな穴。通声穴の向こうには、見たくもない顔がある。

顔を見たのは、何年ぶりか分からない。

でももう会いたくなかった、二度と会いたくなかった。


全く、反省の色を見せない椅子の座り方に、頭の血管が切れそうになる。



「──……あんた、自分が何したか分かってるの?」



私が聞いても眉ひとつ動かさず、無視してくる──弟に、空いた口が塞がらない。



「昔からそうだった!家で暴れて!好き放題!いっつもいっつも補導されて……!! あんたのせいでこっちはいつも大迷惑!」



昔から──こいつは。



「小学校の頃は万引き、虐め……中学になったら家に帰らなくて……親が離婚したのもあんたのせいじゃん!! あんたが普通じゃないから!!」


「……」


「金さえ払えばなんとかなるって思ってる親のせいもあるかもしれないけど!!」



人のことを考えない、疫病神。



「女の子を監禁して、暴力なんて……相手の子、酷い後遺症を負わせて……本っ当に……バカじゃないの?」




もう、呆れて、涙さえでず。

私の言葉でピクリと反応した弟は──……「後遺症?」と私の方に目を向ける。


私はその目に向かって睨みつけた。




「なに、知らなかったの? 麻痺が残って歩けないって……。1度、病院へ会いに行ったけど……〝気にしてません、大丈夫です〟って……あいうえおが書いているプレートを使って……。麻痺のせいで喋れなくて……わらって……。なんであんないい子に、あんたは、なんてことを……」


「ま、ひって……」


「もう知らない、あんたなんか。もう弟じゃない。家族と思わない。二度と私の前に現れないで」


「……待て、あいつ、無事なのか? そのは──……」



目の前のガラスが無ければ、私が弟の顔を殴りたかった。



「知らない、おじいちゃんが亡くなった今、あんたの味方はいないから。この中で野垂れ死ね。葬式にも行かないから。──あんたの頭が壊れればよかったのに」




もう会うことはない、最初で最後の犯罪者の面会。


まるで死んだように喋らなくなった弟、──大毅を睨みつけた後、私はその部屋から出た。





────私の人生は、大毅のせいで、最悪だったのに。

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