第47話
陸くん。
高校生のとき、大好きだった人。
だけど、失恋してしまった人。
彼は、クリスマスを一緒に過ごしたかった人とどうなったんだろう。
もしかして今もお付き合いしているとか。
または、結婚しているとか。
そっと彼の指を盗み見る。
指輪はなかった。
ほっとしている自分に気が付いて、罪悪感でちり、と胸が痛くなる。
本当は今もずっと忘れられない。
未練がましいかもしれないけど、彼以上に好きになれる人なんていなかった。
あんなに親身になってくれる人は後にも先にも陸くんだけだ。
せっかく再会したのだから、たった1日、昔話をするくらい許されたい。
「また陸くんと会えるなんて思わなかった」
私はお通しのきゅうりの浅漬けを食べながらしみじみとこぼした。
「どこにいるかも分からなかったのに」
「そう? 俺は会えるって思ってたよ」
陸くんも小鉢をつつく。
「晴なら絶対夢を叶えるって信じてた」
これ旨いな、と言いながら彼はもぐもぐと口を動かす。
私の心臓がどき、と鳴った。
「……陸くんも頑張ってるって思ってたから、私も頑張れたんだよ」
「俺も」
陸くんが嬉しそうに笑う。
「やっとここまで来たよな、俺たち」
陸くんは感慨深そうにビールの入ったグラスを傾げた。
あの頃、陸くんはギフトを抑える薬を開発すること、私はカウンセラーになることが夢だった。
だけどそれはひとつの目標にすぎなくて、陸くんも私もギフトを持つ人の力になることが本当の夢だ。
今はまだ、その途中にいる。
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