第40話
「……私、進路決めたよ」
私の唐突な発言に、え、と陸くんは振り向いた。
「私、カウンセラーになる」
「カウンセラー?」
陸くんの口から白い息がこぼれる。
「うん。入院中に相談に乗ってくれたカウンセラーの先生のおかげで、みんなにギフトを受け入れてもらえたから……私と同じように、ギフトのことで悩んでる人の力になりたいなって」
言葉は驚くほどするすると出てきて止まらない。
「決まった大学院まで行かなきゃいけないし、勉強も大変だし……今からじゃ間に合わないかもしれないけど、でも」
「晴ならなれるよ」
陸くんはきっぱりと言い切った。
「頑張れ」
陸くんは片手で拳を作ると、私に向かって突き出した。
陸くんは進路が決まったら教えてって言った。
決まったら応援するからって。
きっと今みたいに。
私も陸くんと同じように拳を作って、彼のそれにこつん、とぶつけた。
陸くんは屈託なく笑っている。
つられて私も微笑んだ。
力強い彼の感触。
風は嘘みたいに吹かなかった。
彼は最後まで優しかった。
きっとこの先二度と、陸くんに触れることはないだろうと私は悟った。
でも、応援してもらえただけで十分だった。
陸くんの「頑張れ」の一言で、この先なんだって乗り越えていける気がする。
私たちは駅でまた明日ね、と言って別れた。
「……ばいばい」
私は改札に吸い込まれていく彼に小さく告げた。
一番星が暗闇に輝いている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます