第40話

「……私、進路決めたよ」


私の唐突な発言に、え、と陸くんは振り向いた。


「私、カウンセラーになる」


「カウンセラー?」


陸くんの口から白い息がこぼれる。


「うん。入院中に相談に乗ってくれたカウンセラーの先生のおかげで、みんなにギフトを受け入れてもらえたから……私と同じように、ギフトのことで悩んでる人の力になりたいなって」


言葉は驚くほどするすると出てきて止まらない。


「決まった大学院まで行かなきゃいけないし、勉強も大変だし……今からじゃ間に合わないかもしれないけど、でも」


「晴ならなれるよ」


陸くんはきっぱりと言い切った。


「頑張れ」


陸くんは片手で拳を作ると、私に向かって突き出した。


陸くんは進路が決まったら教えてって言った。

決まったら応援するからって。

きっと今みたいに。


私も陸くんと同じように拳を作って、彼のそれにこつん、とぶつけた。

陸くんは屈託なく笑っている。

つられて私も微笑んだ。


力強い彼の感触。

風は嘘みたいに吹かなかった。

彼は最後まで優しかった。

きっとこの先二度と、陸くんに触れることはないだろうと私は悟った。


でも、応援してもらえただけで十分だった。

陸くんの「頑張れ」の一言で、この先なんだって乗り越えていける気がする。


私たちは駅でまた明日ね、と言って別れた。


「……ばいばい」


私は改札に吸い込まれていく彼に小さく告げた。

一番星が暗闇に輝いている。

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