第36話
なので私は、正直に話すことにした。
「私ね、今までずっと、うまく友達作れなかったの」
私が話し始めると、マコちゃんも陸くんも、そっと伺うように顔を上げた。
「高校に入って、マコちゃんが仲良くしてくれて、今は陸くんとも話せるようになって、本当に、すごくすごく嬉しいの。2人には感謝してる。だからごめんなさい、私のせいで2人を巻き込んで――」
「晴ちゃん、私のこと友達だって思っててくれたんだね」
見ると、マコちゃんは嬉しそうにはにかんでいた。
ほっと安心したようなマコちゃんの顔。
「晴ちゃん、いっつも遠慮するから。私ばっかり友達なんだと思ってた」
マコちゃんは私が心を開くのを待っていてくれたのかもしれない。
いつか私と本音で話をしたいって思っていてくれたのかもしれない。
なんだか胸がじんとして、思わず涙が出そうになる。
「ごめ――」
「こういうときはごめんじゃなくてありがとうって言うんじゃない?」
陸くんがそう言ったので振り向いた。
ああ、そうか。
私はいま嬉しいんだ。
本音で話して、それを受け入れられたことが。
そういう人が、2人も目の前にいることが。
「もう、今日は謝り合う会なの?」
マコちゃんが目尻を拭いながら、いつもの調子で笑った。
「違うだろ、マコのお菓子食べに来たんだよ」
「えっ、私はただマコちゃんの顔が見たくて」
私が2人を見比べると、マコちゃんがあはっと笑った。
「じゃあ私の顔はもう見ただろうから、別のお菓子持ってくるね。パウンドケーキとシフォンケーキもあるの、ちょっと待ってて」
マコちゃんはそう言って部屋を出ていって、陸くんと2人になるとなんだか私は笑えてきてしまった。
ふふふ、と笑いながら両手で赤くなったであろう頬をぴたりと押さえる。
「なんだよ」
クッキーをつまむ陸くんが満足そうな顔で言う。
「私、幸せ者だなあって」
私も1枚クッキーを口に入れた。
ほろりと溶ける、バターの味。
ほんの少しの塩っ気がアクセントになって、すごく美味しい。
「それなら、ここにいるみんなだから」
みんなでお茶を飲んで、お菓子をつまんで。
みんながみんなを想い合っていることが分かったから、まるで今日は記念日だ。
「そうだね」
温かい風が一瞬、するりと吹いた。
まるで春の晴れの日のような、ぽかぽかした温かい風。
お菓子の甘い香りを運んでいく。
やがて戻ってきたマコちゃんのお盆には、とても食べきれない量のケーキが乗っていて、誕生会でもするつもりか、と陸くんが突っ込んだので私たちはまた笑った。
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