第35話

マコちゃんは視線を落として、でもね、とぎゅっと膝の上で拳を握る。


「私、晴ちゃんの名誉を傷付けた。晴ちゃんと仲良くしてる私がそんなことをしたら、晴ちゃんまでそんな風に見られるかもしれない。それがいちばん悲しくて、悔しい」


マコちゃんはきゅっと口を一文字に結んで、頭を下げた。


「ごめんなさい」


マコちゃんのつむじが私を向いている。

部屋は再びしんとした。

私は言葉を失った。

マコちゃんの心の傷の深さは、私が想像するよりずっと深くて重いみたいだ。


でも、私は友達にこんなことをさせるつもりでここに来たわけじゃない。


「顔上げてよ、マコちゃん」


私は前のめりになって語りかけた。


「だってそもそも、私がギフトを制御できなかったから事件にしちゃったわけで……あれがなかったら、マコちゃんにこんな思いさせることもなくて」


「なら、俺も同罪だな」


関係ないはずの陸くんまでそう言ったので、私たちは陸くんを向いた。


「あの事件の直前、俺も晴に酷いこと言っただろ。それも晴の気持ちを乱した原因の1つだと思ってる。ずっと気になってたんだ、ごめん」


陸くんまで頭を下げたのでいよいよ私は慌てた。


「ちょっと止めてよ、ねえ」


2人とも、もういいから、と何度言っても2人は頭を上げない。

まさか2人に謝られるなんて思ってなかった。

第一、私は彼らが悪いなんて微塵も思っていないのだから。


今までの人生で、自分が頭を下げることはあっても、下げられたことなんて経験したことがない。

だからこういうとき、どうしたら場が収まるのか分からない。

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