第33話
「お待たせ」
しばらくして、マコちゃんはお盆にティーカップとクッキーのお皿を乗せて持って戻ってきた。
私と陸くんの前にどうぞ、と紅茶の入ったカップを置いてくれて、テーブルの真ん中にはたくさんのクッキーの乗った大きなお皿が鎮座した。
甘くて美味しそうな香りが部屋じゅうに広がっていく。
「暇だったからたくさん焼いちゃった。まだあるからどんどん食べてね」
「ありがとう」
でもマコちゃんは、一度も私と目を合わせない。
座ってしまうといよいよ無言になって、沈黙で部屋が重苦しい。
陸くんはああ言ったけど、やっぱり怒ってるのかもしれない。
どうして私がこんな目に、って思っているのかもしれない。
もうマコちゃんと今までみたいに話せなくなるかも……頭の中をぐるぐると不安が支配する。
でも、だけど、ここでマコちゃんと向き合わなかったらずっと逃げ続けることになる。
それは彼女に対して失礼だ。
マコちゃんは、私のために戦ってくれたのに。
私は両の拳をスカートの上でぎゅっと握りしめ、意を決して息を吸った。
「「ごめんなさい!!」」
頭を下げた私たちの声が重なった。
あれ、と思って恐る恐る顔を上げると、マコちゃんも同じ姿勢で私を見つめている。
「なんでマコちゃんが謝るの!? 悪いのは私なのに」
「晴ちゃん、なんにも悪くないよ! 迷惑かけたのは私だよ」
また声が重なって、私たちの頭の上にたくさんのクエスチョンマークが浮かぶ。
何も言えずにいると、ぶはっ、と吹き出した笑いが私たちの間に入り込んだ。
「お前ら、仲良すぎだろ」
くく、と陸くんは笑いながら姿勢を崩して、マコちゃんの焼いたクッキーをひとつつまんで、口に放り込んだ。
「とりあえず食ったら?」
旨いよこれ、と2枚目を持ち上げた陸くんが言うと、
「私が作ったんだから当たり前じゃん!」
ありがと! とムキになったマコちゃんが言ったので、私はぷっと吹き出した。
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