第六章

第32話

お茶持ってくるからちょっと待ってて、と言い残してマコちゃんは部屋を出ていった。

静かな部屋に私と陸くんが残される。


何度も訪れた部屋だ。

高校生になって、マコちゃんと仲良くなって、この部屋で遊んだり、勉強したり、笑ったり泣いたりした。

どこに何があるか、私もマコちゃんと同じくらい知っている。


マコちゃんは元気なように見えるけど、謹慎の理由は暴力を伴った喧嘩だ。

相手に殴られたり、叩かれたりはしなかっただろうか。

怪我を負ったり、跡が残ったりはしなかっただろうか。


私が原因で、彼女の体にも、経歴にも、たぶん心にも……傷を付けてしまった。

謝ったって許されることじゃないって、分かってるけど。


「大丈夫」


いつの間にか身を固くして息を詰めていた私は、はっと隣に座る陸くんに振り返る。


「マコは話せば分かるやつだから」


陸くんがいつも通り落ち着いているのにほっとして、私はうん、と小さく頷いた。


その通りだ。

マコちゃんは明るくて優しくて温かい人だ。

それは、マコちゃんのいちばん近くにいた私が誰よりも知っている。

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